木曽馬

木曽馬（きそうま）

木曽馬は、長野県木曽地域（木曽郡）を中心に飼育されている日本在来馬の一種です。岐阜県飛騨地方でも飼育されています。

日本在来馬としての木曽馬

日本には、木曽馬の他に北海道和種（道産子）、野間馬、対州馬、御崎馬、トカラ馬、宮古馬、与那国馬といった在来馬が存在します。しかし、本州に現存する在来種は木曽馬のみとなっています。

歴史と絶滅の危機

明治・大正時代には、西洋種との交配や牡馬の去勢により、木曽馬は絶滅寸前まで追い込まれました。しかし、木曽馬保存会を中心とした活動により、飼育数は増加しました。一方で、農耕馬としての需要は失われ、高齢化により個人所有者の数も減少傾向にあります。

令和元年時点で木曽地域で飼育されている木曽馬は138頭です。

木曽馬の分類

純血に近い木曽馬は「木曽種」または「木曽馬」と呼ばれ、別名「木曽駒」とも呼ばれます。一方、西洋種との交雑によって生まれた馬は「木曽馬系」または「木曽系」と呼ばれ、区別されています。乗馬などで使われているのは、木曽馬系が多く、中には半血種もいます。また、血統証明がない馬や、実際の血統が不明な馬も存在します。

起源

木曽馬の起源は明確ではありませんが、蒙古（大陸系）の馬が起源と考えられています。一説によると、紀元前1世紀の漢で改良された「蒙古草原馬」が、2～3世紀に朝鮮半島経由で渡来したとされています。この馬が木曽の山岳地帯で飼育されたことで、現在の木曽馬になったと考えられています。

特徴

体格: 中型馬で、平均体高は雌で133cm、雄で136cm。体重は350kgから420kgです。西洋種との交雑が少なかった地域ほど体高が低い傾向があります。
鰻線: 背中に沿って黒い線（鰻線）があります。改良によって鰻線を持つ個体は減りましたが、純系には見られることが多いです。
体型: 短足胴長で、体幅が広いです。
性格: 元々は温和な品種でしたが、西洋種との交雑で気性が変わったと言われています。
足腰: 山間部での農耕や運搬に使われていたため、足腰が強く、頑強です。
蹄: 後肢がX状になっており、蹄は外向姿勢です。そのため、横への踏ん張りが利き、山の斜面でも移動できます。純系は蹄が堅く、蹄鉄を打たなくても農作業に使えます。
歩様: 本来は側対歩でしたが、西洋種の血が入った木曽系は斜対歩になります。現在では、側対歩ができる木曽馬はいません。
食性: 草のみでも飼育できます。盲腸が洋種馬よりも長く太いためです。
毛色: 現在は鹿毛が多いです。

歴史

古墳時代: 4世紀末から5世紀にかけて馬が日本に伝来し、東日本の中央高地で最初に飼育されました。
飛鳥時代: 6世紀頃、美濃国恵那郡（現在の岐阜県中津川市）で馬の放牧が始まりました（木曽地域は当時美濃国の一部でした）。
平安時代～江戸時代: 武士の馬、農耕馬、荷馬として活躍しました。小型で山間部に強いことから重宝されました。
鎌倉時代: 新田義貞の軍が使用した軍馬が木曽馬であったことが、遺跡からの発掘で判明しました。
江戸時代: 木曽馬が武将に好まれたため、良質な馬が外部に流出し、改良が試みられました。南部馬との交配や、馬の小作制度が普及しました。
明治時代～大正時代: 農耕馬として飼育数が増加しましたが、軍用馬には不適格とされ、西洋種との交配が進められました。純血の木曽馬は激減し、体型も変化しました。
昭和時代: 戦後、木曽馬復元活動が始まりました。純血に近い木曽馬の繁殖が行われ、木曽馬保存会が設立されました。
平成時代: 開田高原の木曽馬が長野県天然記念物に指定されました。
令和時代: 木曽馬の頭数は138頭にまで回復しましたが、近親交配による弊害が課題となっています。乗馬など新たな活用も模索されています。

第三春山号

第三春山号は、最後の純血木曽馬とされています。体高132cm、体長158cmの馬格でした。父は神明号、母は鹿山号で、いずれも純血です。種雄馬として活躍しましたが、農業機械化により需要が減少し、殺処分の危機に瀕しました。その後、木曽馬保存会により保護され、木曽馬の血統の復元に貢献しました。700頭もの子孫を残し、1975年に安楽死処分されました。内臓と骨格は研究用標本として保管され、皮は剥製となり木曽町の郷土館に置かれています。

現状と課題

木曽馬は、その歴史と特徴から貴重な存在です。しかし、近親交配による奇形率の上昇や、高齢化による個人所有者の減少が課題となっています。今後、木曽馬の保護と育成を進め、その魅力を広く伝えていくことが求められています。

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