未来戦争

未来都市のドタバタ劇と文明崩壊：トムとジェリー『未来戦争』

1967年3月10日に公開されたチャック・ジョーンズ監督によるトムとジェリー短編アニメーション『未来戦争』（原題：Guided Mouse-Ille）は、前作『トムとジェリーウォーズ』に続く、未来の宇宙都市を舞台にした作品です。高度に発達したロボット技術が社会に浸透した西暦2565年、トムとジェリーは、それぞれの陣営にロボットを従え、いつもの追いかけっこを繰り広げています。

ジェリーはネズミ型ロボットを操り、チーズを盗み出そうと画策します。これに対し、トムはネコ型ロボットを投入しますが、ジェリーの巧みな戦略の前にことごとく失敗。ロボット作戦の失敗を受け、トムは自ら特殊マシンを駆使してジェリーに挑みます。不可視化マシンや強力な電磁石付きマシンなどを用いますが、ジェリーの機転の前に返り討ちに遭い、更には改良中のネコ型ロボットに反乱を起こされ、光線銃で撃たれて真っ黒焦げになるという有様。

ジェリーの圧倒的な勝利に、トムは決死の策に出ます。それは、強力な爆弾の調合です。一方、ジェリーもチーズから抽出したエキスを混ぜ込んだ爆弾を用意。トムが調合した爆薬のタンクにジェリーの爆弾が投入され、大爆発が起こります。

爆発の後、物語の舞台は突如として原始時代へと変わります。大爆発によって未来文明は完全に崩壊し、古代へタイムスリップしたのか、あるいは文明が破壊され原始時代へ逆戻りしたのかは定かではありません。トムとジェリーは原始人の姿で、一本の骨を仲良くしゃぶっています。しかし、いつものように、トムのジェリーに対する食欲が抑えきれなくなり、再び追いかけっこが始まるのです。最後は「THE END???」という文字が表示され、物語は幕を閉じます。

この作品は、アインシュタインが示唆した「第三次世界大戦と第四次世界大戦」に関する発言を風刺していると言われています。アインシュタインは、「第三次世界大戦がどのような戦いになるのかはわからないが、第四次世界大戦は人類は石と棒で争うだろう」と述べており、本作の結末は、高度な文明が崩壊し、原始的な争いへと逆戻りする様子を描写することで、アインシュタインの予言を視覚的に表現していると言えるでしょう。

登場キャラクターについても詳しく見ていきましょう。

トムは、ネコ型ロボットを駆使したり、自ら様々なマシンや武器を用いてジェリーを捕獲しようとしますが、全て失敗に終わります。最終的には爆薬を調合しますが、ジェリーの爆弾が混入したことで大爆発を引き起こし、原始時代へとタイムスリップしてしまいます。それでも、原始時代においてもジェリーへの食欲は収まらず、追いかけっこを再開します。

ジェリーは、ネズミ型ロボットを巧みに操り、トムの策略を次々と打ち破ります。自らも戦車に乗り込みチーズを盗み出し、トムを翻弄します。そして、チーズエキス入りの爆弾を調合し、トムの爆薬に混ぜ込むことで大爆発を引き起こします。原始時代でもトムと骨を分かち合いますが、トムの食欲を再燃させる結果となります。

ネコ型ロボットは、日本の交番を思わせる詰所で待機し、トムの命令でジェリーを捕獲しようとしますが、ジェリーの策略に嵌ってトムに修理される始末。その後、トムによって改良されますが、それでもジェリーに敗北し、最終的にはトムに反乱を起こします。

ネズミ型ロボットは本作で初登場し、ジェリーの命令でチーズを持ち運ぶ活躍を見せます。その俊敏な動きと飛行能力でネコ型ロボットを翻弄します。

その他、トムを運ぶ救急隊員なども登場し、未来都市の賑やかで混沌とした様子が描かれています。1980年頃には日本テレビ系で放映され、DVDにも収録されているため、現在でも多くの人々に楽しまれている作品と言えるでしょう。

『未来戦争』は、未来と過去の対比、高度なテクノロジーと原始的な欲望の対比など、様々な要素が織り込まれた、興味深いトムとジェリーの短編作品です。独特のユーモアと風刺が効いたストーリー展開は、多くの視聴者に楽しさと考えさせる時間を提供してくれるでしょう。

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