末永照和

末永照和（すえなが てるかず）は、1931年5月26日に北海道釧路市で生まれ、日本の美術史研究において重要な足跡を残した人物です。彼は桜美林大学の名誉教授であり、国際美術評論家連盟の会員としても知られています。末永は、東北大学文学部で美学美術史を専攻し、卒業後、『美術手帖』や『みづゑ』といった美術専門誌に執筆活動を行いました。

その学術的なキャリアにおいて、桜美林大学で教鞭をとり、後に名誉教授の称号を受けました。また、実践女子大学でも教授を務め、2002年に定年退職するまで、多くの学生を育成しました。1984年には、その研究業績が認められ、「ジェームズ・アンソール」に関する研究で芸術選奨新人賞を受賞しました。さらに、2013年には「評伝ジャン・デュビュッフェ　アール・ブリュットの探求者」で第23回吉田秀和賞を受賞し、その研究の深さと影響力が改めて評価されました。

末永の著作は、20世紀美術、特にピカソやセザンヌといった巨匠の研究に焦点を当てています。『ピカソの時代』（1972年）や『ピカソの道化師たち』（1984年）では、ピカソの多面的な芸術世界を詳細に分析し、その変遷を追っています。また、『ジェームズ・アンソール 仮面の幻視者』（1983年）では、アンソールの独特な画風とテーマを深く掘り下げ、『かくも長き痙攣の時 二十世紀画家論』（1987年）では、20世紀美術の動向を包括的に考察しています。セザンヌについては、『セザンヌを愛するために その人生と芸術』（2002年）で、その生涯と芸術に対する深い愛情を表現しています。

さらに、末永は翻訳家としても活躍しており、ロジェ・ガロディの『カフカ 岸辺なきレアリスム』（1970年）や『ピカソ 反抗の弁証法』（1973年）、ガエタン・ピコンの『芸術の手相』（1989年）、バーナード・デンヴァー編の『素顔の印象派』（1991年）、ローランド・ペンローズの『ピカソ』（1994年）など、多くの美術関連の書籍を翻訳し、日本の読者に海外の美術思想を紹介しました。特に、『評伝ジャン・デュビュッフェ　アール・ブリュットの探求者』（2012年）は、アール・ブリュットの創始者であるデュビュッフェの生涯と芸術を詳細に描き出した力作であり、美術史研究における新たな視点を提供しています。

末永照和の研究活動は、20世紀美術の理解を深める上で不可欠な貢献をしており、その著作や翻訳は、美術愛好家や研究者にとって重要な資料となっています。彼の緻密な分析と深い洞察は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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