本因坊察元

本因坊察元（ほんいんぼう さつげん）

本因坊察元は、江戸時代中期に活躍した囲碁棋士で、九世本因坊として知られています。1733年（享保18年）に武蔵国で生まれ、1788年3月3日（天明8年1月26日）に生涯を閉じました。本因坊伯元の門下であり、名人碁所という囲碁界における最高の地位に上り詰めました。特に、六世井上春碩因碩との激しい争碁に勝利して名人となったことは、彼の輝かしい業績として語り継がれています。

生い立ちと初期の活躍

察元は武蔵国、現在の埼玉県幸手市平須賀で生まれました。間宮姓を名乗り、父は又左衛門でした。1754年（宝暦4年）に六段であった頃、師である伯元が病に倒れ、井上春碩因碩が代理で察元を跡目とする願書を提出し、跡目相続が認められました。同年9月に伯元が亡くなると、因碩に付き添われて登城し、老中松平右近将監から家督相続を認められました。翌1755年（宝暦5年）には御城碁に初出仕し、因碩に先番4目勝ちという見事な勝利を収めました。

名人碁所への道

1756年（宝暦6年）に七段への昇段を目指しましたが、安井春哲仙角は了承したものの、因碩と林転入門入が反対しました。察元は同じ六段であった門入に対し、過去の対局で五番勝ち越していることを主張し、再び争碁を挑みました。その結果、因碩と門入の同意を得ることに成功しました。1764年（明和元年）には、因碩と共に八段準名人に昇進しました。1766年（明和3年）には、本因坊道知門下であった林祐元門入を添願人として名人就位を願い出ましたが、これに対し因碩と仙角が反対したため、因碩との間で二十番の争碁を打つことになりました。最初の対局は同年の御城碁で行われ、因碩先番でジゴとなりました。その後、2局目から6局目にかけて察元が5連勝し、手直りを申し入れた結果、寺社奉行に認められ名人就位を果たしました。ただし、この時点では碁所就位は認められませんでした。

その後も察元は碁所就位を求め続け、因碩と跡目の春達、仙角と跡目の仙哲らが再度の争碁を求めて、それぞれ幾度も願書を提出して争いました。1770年（明和7年）に至り、老中列席の下で寺社奉行土屋能登守から遂に碁所に任ぜられました。同年には山本烈元を跡目に定めました。その後、本因坊家恒例の京都寂光寺への墓参を行いましたが、法眼の格式をもって大々的な行列を組み、莫大な費用を費やしたものの、本因坊家の威光を示すこととなりました。

本因坊道知以降、名人碁所は空位となっており、本因坊家も3代続けて七段に達することがないという碁道衰退の時代でしたが、察元の名人碁所就位によって棋道中興の祖と呼ばれるようになりました。

エピソード

1767年（明和4年）の御城碁では、将軍徳川家治が上覧し、察元に対して将棋について尋ねたところ、将棋二段であると答えたとされています。1768年（明和5年）の御城碁で井上春達に向二子で2目負けとした碁は、察元の一生における出来事として有名です。

主な戦績

因碩二十番碁
御城碁

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年

関連項目

名人 (囲碁)#終身名人制
* 本因坊#歴代世襲制本因坊

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