安井春哲仙角

安井春哲仙角（やすい しゅんてつせんかく）

安井春哲仙角は、18世紀の江戸時代に活躍した囲碁棋士であり、家元の一つである安井家の五世当主です。正徳元年に近江国（現在の滋賀県）で生まれ、寛政元年に79歳で没しました。幼名は田中春哲といい、四世安井仙角の門下で腕を磨き、準名人八段にまで上り詰めました。

生涯

春哲は、小路権田夫の子として生まれました。享保13年（1728年）に四世仙角の跡目であった知仙が亡くなったため、享保20年（1735年）に改めて跡目となり、安井春哲と名乗るようになります。同年には御城碁に初出仕し、本因坊秀伯に先番2目勝ちを収めました。

家元間の確執

元文2年（1737年）に四世仙角が亡くなると、春哲が家督を継いで五世安井仙角となりました。この年には、伊藤宗看による「碁将棋名順の訴」が起こり、仙角は林因長門入、井上春碩因碩、本因坊秀伯らと共に従来の順位を守る側に立ちました。

元文4年（1739年）には、本因坊秀伯が七段への昇進を求めた際、仙角は林因長門入、井上春碩因碩を説得しましたが、同意を得られませんでした。寛保3年（1743年）に門入が名人碁所への出願を試みると、本因坊伯元と共に反対の異議書を提出し、争碁を迫って門入を断念させました。

寛延元年（1748年）からは、弟子の原仙哲を跡目として御城碁に出仕させるようになります。

明和3年（1766年）に本因坊察元が碁所就位を出願した際には、井上春碩因碩と共に反対し、察元と春碩の間で争碁が行われる事態となりました。翌年、争碁の結果、察元が名人に就くと、仙角と因碩は跡目の仙哲、春達との争碁を察元に求め、更に察元の碁所就位に反対して跡目との対局を求めました。しかし、察元の反駁により寺社奉行からは認められず、明和7年（1770年）に察元が碁所に就き、お止め碁となりました。

後継

御城碁には、明和8年（1771年）に最後の出仕を果たし、生涯で30局を勤めました。明和9年（1772年）には、門下の坂口仙徳六段を外家として御城碁への出仕を推薦し、外家の出仕は星合八碩以来となりました。

安永4年（1775年）に隠居し、仙哲に家督を譲りました。しかし、仙哲は安永9年（1780年）に37歳で亡くなったため、既に仙哲の養子に迎えていた仙徳の子である仙知に17歳二段で跡式相続させ、七世安井仙知としました。寛政元年（1789年）に没し、法名は高石院仙角日慰信士、深川浄心寺に葬られました。

一線ハイの譜

元文4年（1739年）の井上家門人、相原可碩との対局では、右下の石を助けるために一線を11本這うという珍しい棋譜が残されています。この一連の打ち方によって自身の石を助け、相手の石を取り込みましたが、中央を破られたため総合的に見て得はなく、結果は仙角の11目負けに終わりました。この棋譜は、実戦で生じた珍形として知られています。

御城碁戦績

春哲は御城碁に30局出仕し、様々な棋士と対局しました。主な戦績は以下の通りです。

1735年(享保20年) 先番2目勝 本因坊秀伯
1736年(元文元年) 先番ジゴ 井上春碩因碩
1737年(元文2年) 先番1目勝 本因坊秀伯
1738年(元文3年) 白番3目勝 林因長門入
元文4年'>[1739年] 白番5目負 林門利
1740年(元文5年) 先番1目負 井上春碩因碩
1741年(寛保元年) 白番ジゴ 本因坊伯元
1742年(寛保2年) 先番13目負 林因長門入
1743年(寛保3年) 白番2目負 本因坊伯元
1745年(延享2年) 先番4目勝 本因坊伯元
1746年(延享3年) 白番3目負 本因坊伯元
1749年(寛延2年) 先番ジゴ 井上春碩因碩
1750年(寛延3年) 白番4目負 井上春達
1751年(宝暦元年) 向二子1目負 林転入門入
1752年(宝暦2年) 先番2目勝 井上春達
1753年(宝暦3年) 白番5目勝 井上春碩因碩
1754年(宝暦4年) 白番ジゴ 林転入門入
1755年(宝暦5年) 白番3目負 井上春達
1756年(宝暦6年) 先番3目勝 本因坊察元
1759年(宝暦9年) 先番3目勝 井上春碩因碩
1760年(宝暦10年) 白番4目負 井上春達
1761年(宝暦11年) 白番2目負 林祐元門入
1763年(宝暦13年) 白番12目負 林祐元門入
1764年(明和元年) 先番ジゴ 井上春碩因碩
1765年(明和2年) 先番3目勝 林祐元門入
1766年(明和3年) 白番10目負 林祐元門入
1768年(明和5年) 先番ジゴ 井上春碩因碩
1768年(明和5年) 白番5目負 安井仙哲
1771年(明和8年) 先番3目勝 井上春達因碩
1771年(明和8年) 二子中押勝 本因坊察元

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年

外部リンク

安井仙角（春哲）」'>木石庵「安井仙角（春哲）」

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