本因坊知伯

本因坊知伯（ほんいんぼう ちはく）

本因坊知伯（1710年 - 1733年）は、江戸時代の囲碁棋士であり、六世本因坊を務めました。その短い生涯は、本因坊家の歴史において、衰退期とも呼ばれる時代に位置づけられています。

生涯

知伯は、宝永7年（1710年）に武蔵国（現在の埼玉県、東京都、神奈川県の一部）で生まれました。父は井口半衛門という百姓で、母は五世本因坊道知の姉にあたります。つまり、知伯は道知の甥にあたります。

享保7年（1722年）、13歳という若さで四段格を得て、道知の跡目となりました。同年から御城碁に出仕し、その才能を発揮します。享保11年からは、部屋住みの身分でありながら十人扶持を受けるようになり、将来を嘱望されました。

享保12年（1727年）に道知が亡くなると、知伯が家督を継ぎ、六世本因坊となりました。しかし、その地位についてからわずか6年後の享保18年8月20日（1733年9月27日）に、突然卒倒し、24歳という若さでこの世を去りました。家族は急いで医師と各家元に知らせましたが、彼らが到着する前に息を引き取ったと伝えられています。

知伯の急死を受け、家元三家は協議の上、門人であり、当時奥州に帰郷中であった佐藤秀伯（後の七世本因坊）を後継者とすることを決定しました。秀伯は五段の棋士であり、当時18歳でした。寺社奉行に跡目届けを提出し、急ぎ秀伯を呼び戻し、七世本因坊として家督を相続させました。

知伯の墓所は、東京都杉並区にある妙正寺にあります。この墓所は、1983年に杉並区指定史跡文化財に指定されています。

本因坊家衰微の時代

六世知伯、七世秀伯、八世伯元と、本因坊家は三代続けて当主が六段位で早世するという不幸に見舞われました。知伯は24歳、秀伯は26歳、伯元は29歳で亡くなっています。この約30年間は、本因坊家にとって衰微の時代であり、囲碁界全体にとっても低迷期であったと言われています。いずれも七段に昇段できず、若くして亡くなったことは、本因坊家の勢いを削ぐ大きな要因となりました。

御城碁戦績

知伯は御城碁において、以下の戦績を残しています。

享保7年(1722年) 先番6目勝 井上策雲因碩
享保8年(1723年) 先番ジゴ 林朴入門入
享保10年(1725年) 先番1目負 井上友碩、二子番6目勝 林因長門入
享保11年(1726年) 先番ジゴ 井上策雲因碩
享保12年(1727年) 先番ジゴ 安井仙角
享保13年(1728年) 先番2目勝 林因長門入
享保15年(1730年) 白番4目負 井上春碩因碩
享保16年(1731年) 先番3目勝 井上春碩因碩
享保18年(1733年) 白番4目負 井上春碩因碩

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年

外部リンク

木石庵「本因坊知伯」
奇譜士「本因坊知伯」對手分類

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