林因長門入

林因長門入（はやし いんちょうもんにゅう）

林因長門入（1690年 - 1745年）は、江戸時代中期に活躍した囲碁棋士であり、家元林家の五世林門入としてその名を刻んでいます。土佐国（現在の高知県）に生まれ、幼少の頃より囲碁に親しみ、本因坊道知の門下に入りました。その才能を開花させ、八段準名人という高い地位にまで昇りつめました。

歴代の林家当主の中で、碁所への就位を強く望んだ人物としても知られています。家督を相続する前の名である「因長」を冠して、代々の門入と区別されることが多く、その卓越した棋力から「上手門入」とも称されました。

経歴

本因坊道知門下で研鑽を積んでいた因長は、享保5年（1720年）に四世林朴入門入の跡目となり、因長を名乗るようになります。翌年からは御城碁に出仕し、その実力を示しました。享保11年（1726年）に朴入が隠居すると、七段の腕前で家督を継ぎ、五世林門入となりました。元文元年（1736年）には、岡田門利を跡目に定めています。

元文2年（1737年）には、将棋所三代伊藤宗看によって碁将棋の席次を巡る訴訟が起こされました。当時八段準名人であった門入は、若年であった本因坊秀伯（六段）、井上春碩因碩（七段）、安井春哲仙角（五段）らと共に、従来の序列を維持することとなりました。

元文4年（1739年）に本因坊秀伯が七段への昇段を求めた際、門入と井上因碩はこれに反対しました。これに対し、秀伯は門入との間で二十番の争碁を願い出ますが、門入は病を理由にこれを拒否し、代わりに因碩が争碁を打つこととなりました。この争碁は8局を消化した時点で秀伯が病に倒れたため、中断となりました。

碁所就位運動

寛保3年（1743年）、林門入は名人碁所の空位を埋めるべく、碁所への就位を願い出ます。井上因碩はこれに賛同しましたが、本因坊伯元と安井仙知は反対しました。寺社奉行の大岡忠相は、争碁による決着を命じましたが、門入はこれを拒否し、碁所への就位を断念しました。同年、隠居し、跡目の門利が六世林門入として家督を継承しました。延享2年（1745年）に56歳で亡くなりました。

御城碁成績

林門入は御城碁に多数出仕し、以下の様な成績を残しています。

享保6年(1722年1月) 先番3目勝 井上策雲因碩
享保7年(1722年12月) 先番3目勝 井上友碩
享保8年(1723年) 先番ジゴ 井上策雲因碩
享保9年(1724年) 向二子6目負 本因坊知伯
享保10年(1725年) 白番5目負 安井仙角
享保11年(1726年) 先番3目勝 安井仙角
享保12年(1727年) 白番1目負 井上春碩因碩
享保13年(1728年) 白番2目負 本因坊知伯
享保14年(1729年) 白番5目負 井上策雲因碩
享保15年(1730年) 白番ジゴ 井上春碩因碩
享保16年(1731年) 先番ジゴ 安井仙角
享保17年(1733年1月) 先番3目勝 井上策雲因碩
享保18年(1733年12月) 先番4目勝 井上春碩因碩
享保20年(1735年) 白番3目負 井上春碩因碩
元文3年(1738年) 先番3目負 安井春哲仙角
寛保2年(1742年) 白番13目勝 安井春哲仙角

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
田村竜騎兵「物語り囲碁英傑伝」毎日コミュニケーションズ 2005年

外部リンク

木石庵「林因長（五世門入・上手門入）」
奇譜士「林門入(5世因長)」 對手分類)

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