本寺井駅

本寺井駅について

本寺井駅は、かつて石川県能美市寺井町に位置していた、北陸鉄道能美線の鉄道駅です。能美線自体の廃止に伴い、1980年にその役目を終えました。

地域の拠点として

旧能美郡寺井町の中心部に位置していた本寺井駅は、地域における主要な交通結節点としての役割を担っていました。開業当初から多くの旅客が利用し、活発な貨物輸送が行われていました。特に、貨物取扱量の最盛期には、地元を代表する伝統工芸品である九谷焼の陶器が、駅で取り扱われる貨物全体の約8割を占めた時期もあったと記録されています。この事実は、本寺井駅が単なる旅客駅にとどまらず、地域の産業活動を支える重要な物流拠点でもあったことを示しています。

歴史の変遷

本寺井駅の歴史は、1925年（大正14年）3月21日に、能美電気鉄道の駅としてスタートしました。開業当初から列車交換のための閉塞設備を備え、貨物取扱も行うことができる体制が整えられており、駅長が常駐する有人駅でした。

1943年（昭和18年）10月13日には、戦時下の交通統合政策により、能美電気鉄道が他の事業者と合併して北陸鉄道が発足したことに伴い、本寺井駅も北陸鉄道能美線の駅となりました。

しかし、高度経済成長期を経て社会構造が変化する中で、鉄道による貨物輸送は次第に減少傾向をたどります。これを受け、本寺井駅では1968年（昭和43年）12月30日をもって貨物営業を廃止しました。

さらに、モータリゼーションの進展などにより旅客数も減少したため、1970年（昭和45年）4月1日からは、列車の運行本数が大幅に削減され、駅の利用は朝と夕方の特定の時間帯に限られるようになりました。

駅機能の縮小は続き、1973年（昭和48年）8月1日には、列車の行き違いに必要な閉塞の取り扱いや列車交換設備が撤去され、単線の棒線駅となりました。これに伴い、駅は無人化されました。駅の構造も変更され、かつて島式だったホームは線路の北側に移され、一本の片面ホームが残るのみとなりました。

そして、鉄道路線自体の存続が困難となった能美線が廃止されることになり、1980年（昭和55年）9月14日、本寺井駅も他の能美線の駅と共に75年の歴史に終止符を打ち、廃駅となりました。

駅施設の構造

開業当初、本寺井駅は島式ホーム1面2線を持つ地上駅でした。駅舎は線路の北側に配置され、その横には貨物の積み下ろしに使われる側線が設けられていました。駅の南側には、列車の保守を行うための車庫がありましたが、これは1959年に廃止されています。また、駅の西側からは寺井農協への専用線が分岐しており、農業関連物資の輸送に活用されていたことがうかがえます。

しかし、前述の通り、利用状況の変化に伴いこれらの施設は段階的に廃止・撤去されました。特に晩年には、貨物側線があった場所に新たに設置されたと思われる片面ホームが一本だけ存在する、かつての賑わいが想像できないほど簡素な無人駅となっていました。

駅跡地の現在

能美線が廃止された後、本寺井駅の跡地は公共施設用地として活用されることになりました。1998年（平成10年）には、この場所に当時の寺井町立図書館が建設され、開館しました。この図書館は、現在、能美市立寺井図書館として利用されています。かつて駅が存在したことを示すものは、図書館の建物前に設置されている、往時を偲ばせる駅名標のレプリカのみとなっています。賑わいを見せた駅舎や線路は姿を消しましたが、その跡地は地域住民にとって新たな文化・交流の拠点として生まれ変わっています。

隣接駅

北陸鉄道能美線において、本寺井駅は廃止時点では末信牛島駅と寺井西口駅の間に位置していました。

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