本島人

本島人（ほんとうじん）とは

本島人とは、日本の統治下にあった台湾で、日本人が使用した漢族系住民の呼称です。台湾の歴史を理解する上で、本島人という用語は非常に重要な意味を持っています。それは、台湾の文化や社会構造の変遷を示す一つの象徴でもあります。

台湾の多文化社会

台湾は歴史的に多様な文化を持つ社会です。元々この地には、少数ながらマレー・ポリネシア系の先住民族が居住していました。しかし、オランダの統治時代に入ると、中国大陸から漢族が移住し始めました。特に福建省南部からの福佬人（閩南人）と、広東省北部からの客家人が台湾にやってきました。これらの移民は、言葉や文化を持ち寄り、台湾の社会に大きな影響を与えました。

19世紀初頭まで、これらの漢族の人々は漢化の波を受け、清朝の政策により、台湾の漢族系人口は195万人に達しました。この結果、先住民族は少数派になり、しばしば劣位に置かれることになりました。

日本統治時代の社会構造

1895年、台湾は日本の支配下に入りました。これにより、多くの日本人が台湾に移住し、最終的には日本人居住者が40万人に達しました。この時期、日本は現地の漢族系住民に対して、教育を通じた同化を強制しました。その中で、「内地人」という日本人が頂点に立ち、「本島人」に次いで、最も低い地位に先住民族を置くという階層的な社会秩序が形成されました。このように、本島人という呼称は、日本による「二等臣民」としての地位を象徴するものでした。

台湾人アイデンティティの目覚め

とはいえ、台湾住民は従属的な立場だけでなく、自己のアイデンティティを求める動きも見られるようになります。1921年、台湾文化協会が設立され、台湾人としての新たな民族意識が芽生えました。これにより、押し付けられた「本島人」というアイデンティティに対抗する形で、「台湾人」のアイデンティティが形成されていったのです。

同年、台湾議会設置請願運動が始まり、台湾住民は自主性を求める声を上げました。リーダーの一人であった蔣渭水の「台湾議会請願の出現せしと同時に台湾人の人格が生まれたり」という言葉は、台湾人アイデンティティが誕生した瞬間を象徴しています。

本島人から本省人への移行

1945年8月、沖縄戦の後、ポツダム宣言の受諾によって台湾は中華民国に編入されます。これにより、台湾の住民は中華民国の国籍を回復することとなり、1946年には男性とその子孫が「本省人」に分類されることとなりました。さらに、この時期に台湾に居住していた他の漢族系住民は「外省人」と呼ばれるようになります。こうして、日本統治下の「本島人」は中華民国統治下の「本省人」に変わることとなりました。

まとめ

本島人という言葉は、日本統治下の台湾における漢族系住民の歴史を深く反映しています。台湾の多文化的背景や日本統治時代の影響、さらには台湾人アイデンティティの形成とそれに続く変遷を理解することは、台湾の歴史の一端を知る上で欠かせません。

もう一度検索