本田善光

本田善光（ほんだ よしみつ）

本田善光（ほんだ よしみつ、または本多善光）は、飛鳥時代に生きたとされる人物です。善光寺という寺院の名前の由来になったと伝えられていますが、その実在については、確かな証拠がなく、架空の人物であるという説も存在します。

伝説

伝説によると、善光は信濃国で貧しい生活を送っていました。西暦600年、信濃国司に付き従って都（大和国）へ上った際、難波の堀江で、かつて物部守屋が打ち捨てたという百済渡来の阿弥陀如来像と出会います。善光は、その如来像を肩に乗せて持ち帰り、自宅の臼の上に祀ったところ、光を放ったため、その場所が坐光寺と呼ばれるようになったとされています。

642年、如来のお告げにより、善光は信濃国水内郡芋井の郷（現在の善光寺の所在地）に御堂を建て、如来像を遷すことにしました。しかし、その途中、諏訪郡に6年間安置されることになり、これが善光寺（諏訪市）の由来であると伝えられています。

643年、善光の息子である善佐が亡くなった際、如来が地獄へ救いに行ったところ、当時の皇極天皇と出会いました。善佐の願いを聞き入れた如来は、皇極天皇をも蘇らせたとされています。この出来事に感謝した皇極天皇は、善佐と善光にそれぞれ信濃と甲斐を与え、如来のために立派な御堂を建てました。そして、善光の名をとってその寺を善光寺と名付けたとされています。

『伊呂波字類抄』には、善光は若麻績東人（わかをみ の あずまんど）とも記されています。長野市の善光寺には、現在でも、開山像を安置する「御三卿の間」があり、善光と妻の弥生御前、子の善佐の像が安置されています。

子孫

元禄5年（1646）に坂内直頼が著した『善光寺縁起』には、本多善光の子孫が記されており、代々如来に帰依して寺に奉仕したとされています。その子孫は以下の通りです。

1. 初代：若麻績東人善光（本多善光。如来に奉仕すること13年）
2. 二代：善佐（よしすけ、奉仕すること20年）
3. 三代：諸身（もろみ、奉仕すること20年）
4. 四代：意比（もとちか）
5. 五代：常世（とこよ、奉仕すること30年。以上3人は善佐の子）
6. 六代：国依（こくより、諸身の子。奉仕すること3年）
7. 七代：高倚（たかより、国依の子。奉仕すること19年）
8. 八代：大国（おおくに、国依の子。奉仕すること10年）
9. 九代：東世（あずまよ、諸身の子。奉仕すること9年）
10. 十代：広道（ひろみち、高倚の子。奉仕すること3年）
11. 十一代：利成（としなり、広道の子。奉仕すること2年）
12. 十二代：寛膳（かんぜん、利成の子。奉仕すること7年）
13. 十三代：高雄（たかお、広道の子。奉仕すること7年）
14. 十四代：正常（まさつね、高雄の子）
15. 十五代：時国（ときくに、正常の子）
16. 十六代：豊範（とよのり、正常の孫）
17. 十七代：安平（やすひら、豊範の子）
18. 十八代：時海（ときうみ、安平の子）
19. 十九代：時邦（ときくに、安平の子）
20. 二十代：為重（ためしげ、時邦の子）
21. 二十一代：知里（ともさと）
22. 二十二代：知歳（ともとし）
23. 二十三代：知門（ともかど、以上3人は時海の子）
24. 二十四代：衆延（もろのぶ）
25. 二十五代：高節（たかとき、以上2人は知歳の孫）
26. 二十六代：知隆（ともたか、高節の子）

実在性について

善光寺縁起には、伝説や物語のような記述が多く、縁起の種類によって本田善光の名前の表記が異なるため、その実在は疑われています。善光寺の名前は善光に由来するとされていますが、古い縁起には善光の名前が登場しないことから、本田善光は善光寺よりも後に創作された名前であると考えられています。

現在有力とされている説の一つに、百済王善光の名をとって善光寺と名付けられたというものがあります。この説は古くから存在し、国学者である大石千引は1820年の著作の中で、「天智天皇の時代に難波に住んでいた百済王善光が善光寺の開基であり、河内の誉田に住んで本田善光とも呼ばれていたのだろう」と述べています。ただし、これは1820年の著作であるため、大石千引の推測の域を出ていないとも言えます。

関連事項

善光寺縁起
善光寺式阿弥陀三尊
元善光寺
善光寺 (諏訪市)
善光寺
甲斐善光寺
和光寺

外部リンク

デジタル版 日本人名大辞典+Plus、朝日日本歴史人物事典『本田善光』 - コトバンク
* 信州善光寺

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