本薬師寺

本薬師寺について

本薬師寺（もとやくしじ）は、奈良県橿原市の東南部に存在する、藤原京にかつてあった寺院です。この寺院は、後に持統天皇となる皇后の健康改善を願って天武天皇が建立を誓願したことから始まります。平城京に移った後、区別するために「本薬師寺」と呼ばれるようになりました。さらに、本薬師寺は「元薬師寺」とも言われ、平城京に建設された薬師寺とは異なり「藤原京薬師寺」とも称されます。発掘調査によって、約11世紀初頭までこの寺院が存在していたことが確認されています。

現在、本薬師寺の遺構は橿原市城殿町にある医王院の境内にわずかに残っており、金堂の礎石や東塔、西塔に関連した遺構が見つかっています。これらは特別史跡として指定されています。

歴史

本薬師寺の建立は、天武天皇9年（680年）11月に始まりました。皇后が病に倒れ、その平癒を祈った結果、天武天皇は寺院の建立を決意し、百人の僧侶に出家させたとされています。その後、発掘調査において、天武天皇11年頃には工事が開始されたことが確認されています。天武天皇の死後、持統天皇が建立を引き継ぎ、金堂が688年には完成したことが記録に残っています。

文武天皇2年（698年）にはほぼ完成し、その後、平城京への遷都に伴い、薬師寺は西ノ京に移ることとなります。その際、従来の定説では本薬師寺の伽藍が移転したと考えられていましたが、近年の研究では新たに建立された可能性が高いとされています。

伽藍と構成

本薬師寺の伽藍は藤原京右京八条三坊全域に広がっており、金堂を中心に東塔と西塔が左右対称に配置されています。中門から金堂を囲む回廊があり、その構造は西ノ京の薬師寺とは異なることが発掘調査で分かっています。金堂跡は、周囲の水田よりも1メートル以上高い土壇にあり、礎石が残存しています。東塔と西塔はそれぞれの基壇に重要な遺構があり、金堂は桁行7間、梁間4間の建物であったと考えられています。

また、中門や南門についてもその規模や構造が西ノ京の薬師寺とは異なることが分かっており、本薬師寺ならではの特徴を持っています。

行事と特産

本薬師寺の伝統行事である「本薬師寺まつり」は毎年10月に行われており、かつて存在した「柴燈護摩焚き」の再現が行われています。また、周辺の田んぼではホテイアオイが植えられ、地域の特色を打ち出しています。

アクセス

本薬師寺へは、近畿日本鉄道（近鉄）畝傍御陵前駅から徒歩5-9分、橿原神宮前駅からは約20分の距離にあります。大和八木駅からはバスが利用でき、さまざまな交通手段で訪れることができます。

本薬師寺は奈良時代初期の重要な文化遺産であり、現在もその跡地が歴史的な価値を持っています。

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