本蘭ゴシック

本蘭ゴシックについて

本蘭ゴシック（ほんらんゴシック）は、日本の写植会社である写研によって開発された角ゴシック体です。この書体は、写研が手掛けた最後の新書体であり、特に本文や見出しなど幅広い用途を視野に入れてデザインされています。1990年代に入り、写研はさまざまな書体開発を行う中で、本蘭明朝と併用しやすい極太のゴシック体を必要としていました。

開発の背景と経緯

本蘭ゴシックの開発は、写研の創業70周年を迎える1995年に計画されました。当時、社内では鈴木勉をはじめとする主要な書体デザイナーたちの退社が相次いでおり、書体の開発が緊急課題となっていました。写研では、本蘭明朝と同様のコンセプトを踏まえた新しい角ゴシック体が求められていましたが、同社の社長である石井裕子の意向により、デザインが大幅に変更されることとなります。

石井社長は、自社の伝統的な石井中太ゴシック体に合わせたフォントの作成を指示しました。その結果、作業は遅延し、またコンピュータ環境の技術進化にもかかわらず、アナログデータからの変換作業が求められることになり、本来のリリーススケジュールから大幅に遅れてしまいました。

発表と展開

最初の書体であるU（UHG）は1997年に発表され、1999年には他のウェイト（太さ）の書体群が完成しました。実際のリリース時期は当初計画から5年遅れとなり、2000年にようやく公式に市場に投入されました。この時、Uのデザインにも変更が加えられたため、同じ本蘭ゴシックUでも異なるバージョン（UHGとUHGA）が存在することとなりました。

社名にも関連する命名法が存在し、「本」は本文組用を、「蘭」は社長自身が好きだった花を象徴しています。こうしたこだわりが、本蘭ゴシックというフォントに込められています。広告では「二千年ゴシック」と謳われ、20世紀の文字文化を代表するものとして打ち出されることとなりました。

利用状況と課題

しかし、ちょうどこの頃には、日本の印刷業界においてDTP（デスクトップパブリッシング）への移行が進んでおり、従来の高コストな電算写植から低コストな新技術にシフトしていました。写研は、依然として石井裕子の方針に従い、本蘭ゴシックについても他の書体と同様に、用紙ごとに従量課金で収益を得る方式を採用しました。その結果、手動写植機用の文字盤やDTP向けに適したフォント化がなされることはなく、出版業界における本書体の使用頻度は供給開始から数年の間に限られてしまいました。

ファミリー構成

本蘭ゴシックには、以下のように8種類のウェイトが用意されています。

• - 本蘭ゴシックL（LHGA）
• - 本蘭ゴシックM（MHGA）
• - 本蘭ゴシックD（DHGA）
• - 本蘭ゴシックDB（DBHGA）
• - 本蘭ゴシックB（BHGA）
• - 本蘭ゴシックE（EHGA）
• - 本蘭ゴシックH（HHGA）
• - 本蘭ゴシックU（UHGA）

これらはすべて1999年にリリースされ、各書体には独自の特徴があります。

まとめ

本蘭ゴシックは、写研が最後に発売した書体として、様々なデザインの背景と工夫が詰まっていますが、当時の印刷業界の変化により、その活用は限られたものとなりました。日本の文字文化の一端を担う書体として、現在も多くの人に知られています。

もう一度検索