本途物成

本途物成（ほんとものなり）とは

本途物成とは、近世日本において、田畑や屋敷地に対して課せられた租税のことです。江戸幕府や諸藩が徴収した年貢の中でも、中心的な役割を果たしました。本年貢、あるいは単に物成とも呼ばれていました。

概要

本途物成は、農民が負担する年貢の最も基本的なものであり、武士（幕府や藩）にとっては重要な収入源でした。原則として、検地によって石高が算出された田畑や屋敷が課税対象となりました。検地が困難な山林や原野、湖沼、河川などからは、その生産物に対して小物成が課されました。ただし、山林や原野などであっても、生産量に応じて石高に換算できる地域では、本途物成の対象となりました。

小物成の他にも、付加税、高掛物、夫役、浮役など、様々な雑税が課されていました。これらの雑税と区別するために、本途物成という言葉が用いられたのです。

納め方

本途物成は、原則として米で納めることとされていました。しかし、畑に課された本途物成（畑方物成）では、麦や大豆、漆などの農産物による現物納が一般的でした。また、地域によっては金銭による納付も併用されました（関東畑永法や半石半永法など）。時代が進むにつれて、米による現物納が基本であった田に課された本途物成（田方物成）でも、一部で石代納や金納が行われるようになりました。これは、貨幣経済の浸透により、領主経済における米の重要性が低下したことが影響していると考えられます。

さらに、専売制や営業税、御用金など、商工業を対象とした課税が登場したことにより、本途物成の重要度は低下していきました。天保年間には、幕府の年貢収入全体に占める米納の割合は4割にまで減少しました。

本途物成の変遷

初期の江戸幕府では、年貢収入の大部分を本途物成が占めていました。しかし、時代が進むにつれて貨幣経済が発展し、米以外の収入源も重要になってきました。そのため、本途物成の役割は徐々に変化していきました。また、幕末期には、財政難を打開するために、本途物成の増徴や金納化が進められました。

本途物成は、江戸時代の農民の生活に大きな影響を与えただけでなく、幕府や諸藩の財政を支える上で非常に重要な役割を果たしました。

参考資料

佐藤常雄「本途物成」『国史大辞典 12』（吉川弘文館 1991年） ISBN 978-4-642-07721-7
大口勇次郎「本途物成」『日本史大事典 6』（平凡社 1994年） ISBN 978-4-582-13106-2
* 神谷智「本途物成」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年） ISBN 978-4-09-523003-0

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