金納

金納（きんのう）とは

金納とは、租税を貨幣によって納めることを指します。古くは銭納とも呼ばれました。これに対し、生産物で納めることを物納、または現物納と呼びます。

金納の歴史

近代以前の租税は、原則として物納や労役によって行われていました。金納が登場するのは、貨幣が広く流通するようになった中世以降のことです。

中世の金納

律令制下の租庸調や荘園制下の年貢・公事・夫役は、農産物や特産品、労役で負担するのが基本でした。しかし、鎌倉時代に入ると、貨幣経済の浸透とともに代銭納が現れ、さらに段銭や棟別銭といった税も登場します。室町時代になると、畿内を中心に金納による上納が広く行われるようになりました。

戦国時代と金納

戦国時代には、大名が大量の人馬や物資の動員を必要としたため、輸送や貯蔵の観点から貨幣による財政運営を行うようになります。農民からの租税を金納で徴収したり、金山・銀山・銅山の開発を行ったりしました。この時期、金納は財政運営の効率化に大きく貢献しました。

江戸時代の金納

江戸時代に入ると、兵農分離や撰銭などの影響で貨幣経済が一時的に停滞し、重農主義的な観点から石高制に基づく米納が中心となります。しかし、全国で稲作が行われていたわけではないため、米での上納が困難な地域も存在しました。そのため、石代納や畑永法など、金納による租税徴収も畑作地域を中心に一部で存続しました。また、運上、冥加、小物成など、金納による税も存在し、「江戸時代の税制＝米による徴収」という単純な図式ではないことに注意が必要です。

明治時代の金納

明治時代に入ると、地租改正によって租税を金納に統一する方針が立てられました。しかし、これに反発する地租改正反対一揆などを背景に、一時的に田の地租の半分を米で納める代石納が認められました。しかし、導入直後や松方デフレによる米価下落時以外は代石納を希望する者がほとんどおらず、間もなく代石納は廃止され、すべての租税は金納で行われることになりました。

現代の金納

現代においては、原則としてすべての租税は金納で徴収されています。ただし、相続税については例外的に物納制度が存在します（相続税法41条）。

まとめ

金納は、貨幣経済の発展とともに、租税制度において重要な役割を果たすようになりました。その形態は時代とともに変化してきましたが、現代社会においても、租税の基本としてその重要性は変わりません。

参考文献

佐藤常雄「金納」（『国史大辞典 4』吉川弘文館、1984年）ISBN 978-4-642-00504-3

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