本郷事件

本郷事件

本郷事件（ほんごうじけん）は、1949年（昭和24年）6月2日に福井県大飯郡本郷村（現在の福井県おおい町）で発生した、在日朝鮮人による警察への暴行および派出所占拠事件です。

事件の経緯

事件の発端は、当時の国家地方警察福井県若狭地区警察署の本郷派出所の警察官が、管内の在日朝鮮人居住区域に関する地図を作成したことでした。この警察の行動に対し、在日本朝鮮人連盟（朝連）の幹部が、これを問題視し、若狭地区警察署に抗議に訪れました。

抗議を終えて一旦署を離れた後、この幹部は他の在日朝鮮人に対して働きかけ、総勢約70名の集団を組織しました。彼らはこの集団を率いて本郷派出所へと向かい、派出所を完全に包囲しました。そして、派出所内にいた警察官に対し一方的に暴行を加えた上で、そのまま長時間にわたり派出所内に居座り続け、事実上これを占拠する状態となりました。警察側は事態を把握し、若狭地区警察署から直ちに増援の警察官を現場に急派しましたが、占拠した側は全く退去しようとせず、事態は膠着しました。この派出所の占拠状態は丸二日間続き、ようやく解除されたのは事件発生から2日後の6月4日になってからのことです。

占拠やその後の交渉の中で、在日朝鮮人側は警察に対し、以下の内容を含む複数の要求を突きつけました。

暴行行為に関与したとされる警察官の罷免
事件による被害者への損害賠償の支払い
在日朝鮮人全体への正式な謝罪
今後、朝鮮人に関連する問題を処理する際は、事前に在日本朝鮮人連盟と必ず協議を行うこと

これらの要求に対し、警察は同年6月10日、事件に関与したとされる在日朝鮮人2名の逮捕を決行するため、再び現地に向かうことになりました。しかし、この警察の動きを事前に察知した在日朝鮮人側は、約200名という多数の人員を集結させ、逮捕隊を待ち構えていました。逮捕隊が現場に到着すると、彼らは警察官に対して石礫を投げつけ、さらには汚物である糞尿までをも投げつけるという、極めて激しい妨害を行いました。逮捕隊は困難な状況に直面しましたが、この激しい抵抗と妨害を排除し、断固として現場への突入を強行。混乱の中で、目的の容疑者2名の身柄を確保することに成功しました。

逮捕後も在日朝鮮人側の示威行動は収まりませんでした。彼らは、この警察による逮捕行為を「民族弾圧であり、戦前のファシズム警察の再現だ」と強く非難し、抗議の意思を表明しました。若狭地区警察署の前では、逮捕に抗議する人々が長時間にわたり居座るなどの示威行動が行われました。また、「ファッシズム国警若狭地区警察の真相」と題したビラが多数ばら撒かれるなど、警察に対する批判と抗議の活動が継続的に展開されました。

本郷事件は、終戦直後の占領下という社会情勢において、在日朝鮮人を巡る問題が警察との間で衝突に発展した事例の一つとして記録されています。

参考文献

『福井県警察史 第2巻』（福井県警察史編さん委員会編　1990年）

関連項目

在日本朝鮮人連盟
* 国家地方警察

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