朱粲

朱粲の生涯とその背景

朱粲（しゅ さん）は、隋末から唐初にかけて中国の歴史の中で名を馳せた群雄の一人です。彼の本貫は現在の安徽省亳州市に位置しており、初めは隋の県佐史として仕官しました。大業年間中、彼は軍に従軍して農民の反乱に立ち向かい、長白山においてその武勇を発揮しました。しかし該当時期において、彼は不運にも亡命してしまい、盗賊としての道を選びます。この時、朱粲は「可達寒賊」と名乗り、後には自身を「迦楼羅王」と称し、数十万の兵を集めました。

彼は河南を渡り、竟陵と沔陽を攻撃し山南方面に転戦を繰り返しました。また楚の皇帝の称号を僭称し、「昌達」と「建号」を発行するなど、地域の権力闘争に積極的に関与しました。南陽を攻め落としたのもその一環です。

軍勢と戦闘の巻き添え

昌達4年（618年）、朱粲は山南撫慰使の馬元規と激闘を繰り広げますが、敗北を喫しました。しかし、彼の勢力はそこから立ち直ることができ、再び20万人以上の兵を集結させます。朱粲の軍は落とした州県の食糧を略奪し、その生活は反乱者としての性質を更に強めていきました。彼の部下たちはほとんど働かず、略奪を生業とするようになり、飢餓が広がる中で非常に残忍な行為に手を染めるようになっていきました。

周囲の状況が厳しくなり、軍の中に食糧が不足すると、子どもを誘拐し、彼らを調理して食べるという信じ難い行為が始まりました。さらにはカニバリズムが兵士たちの中で奨励され、婦人や子どもを煮て食べることを厭わなくなるという状況に陥りました。このような恐怖政治により、近隣の都市は逃げ腰になり、朱粲の名は恐怖と共に広がっていくことになります。

最後の運命

昌達5年（619年）、朱粲は顕州の楊士林や田瓚の反乱軍に攻撃され、淮源の戦いで大敗を喫することになります。菊潭まで逃げ延びた彼は、唐に降伏を申し出るため使者を送ります。これに対し、唐の高祖李淵は前御史大夫の段確を派遣し、彼に応接をさせました。この際、酔った段確が冗談として彼に「人間をたくさん料理したそうだが、実際の味はどうだったのか？」と尋ねると、朱粲は「酒を飲んだ人間は、粕漬けの豚に似た味がする」と返答しました。この発言に段確は驚き、朱粲を罵倒しました。

その後、同じ恐怖が蘇る中、朱粲は段確とその従者数十人を捕え、再び残忍な行為に及ぶことになります。朱粲は菊潭でさらに暴虐の限りを尽くし、その後、王世充の下へ逃れ、龍驤大将軍に任命されることになりました。しかし、最終的には武徳4年（621年）に李世民が東都を平定した際、多くの人々が彼の遺体に瓦礫を投げつけ、速やかにその墓を形成したと言われています。

伝記資料

朱粲に関する資料は『旧唐書』の巻56および『新唐書』の巻87に記載されており、彼の一生に関する貴重な情報を現在に伝えています。

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