朴熺太

朴熺太：韓国政治の栄光と影

朴熺太（パク・ヒテ）は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて韓国政界で活躍した、複雑な人物です。法曹出身の経歴を活かし、国会議員を6期にわたって務め、第18代国会後半期には国会議長にまで上り詰めました。しかし、その華々しいキャリアの裏には、数々のスキャンダルと、最終的には有罪判決による転落劇が待ち受けていました。本稿では、彼の波乱に満ちた生涯を詳細に辿り、韓国政治史における彼の位置づけを考察します。

華麗なる経歴と栄光の階段

1938年、慶尚南道南海郡に生まれた朴熺太は、ソウル大学校法科大学を卒業後、1961年に司法試験に合格。検察官としてキャリアを積み重ね、最高検公判部長や法務部出入国管理局長などの要職を歴任しました。1988年の第13代総選挙で国会議員に初当選し、その後も連続当選を果たしました。金泳三政権下では法務部長官に就任しましたが、娘の二重国籍問題や大学入学に関する特恵問題が発覚し、わずか10日で辞任に追い込まれるという苦い経験もしました。

李会昌氏の敗北後、ハンナラ党代表に就任し、李明博氏の支持を表明。李明博政権下では、ハンナラ党の公認を得られずに国会議員に当選しながらも、再び党代表に就任するという手腕を見せました。2009年の再補欠選挙で当選したことで、第18代国会議員の中で最多当選議員となり、その後、国会議長に就任しました。国会議長としての在任期間は2010年から2012年まででした。

スキャンダルと転落

しかし、朴熺太の政治人生は、スキャンダルによって暗転します。2012年1月、当時のハンナラ党所属の国会議員から、2008年の党代表選挙における賄賂疑惑が暴露されました。この事件は、19年ぶりに現職国会議長が任期途中で辞任するという事態を招き、朴熺太は政界を引退しました。

その後も、セクハラ疑惑や検察捜査、起訴といった困難に直面しました。2014年にはゴルフ場でキャディに対するセクハラ疑惑が報道され、元国会議長として初めて性犯罪疑惑で検察の捜査を受けました。2015年、1審で懲役6ヶ月、執行猶予1年の判決を受け、2017年には最高裁で上告棄却となり、有罪が確定しました。これにより、セヌリ党常任顧問を解任され、党からも除名されました。

遺産と評価

朴熺太の生涯は、成功と挫折、栄光とスキャンダルの両面を鮮やかに示しています。韓国政治史に多大な影響を与えた一方、その政治手法や人となりについては、賛否両論が分かれるところです。彼が韓国政治に与えた影響は、彼の功績だけでなく、数々のスキャンダルによっても測るべきでしょう。彼の行動は、韓国政治における倫理と責任の重要性を改めて問いかけるものです。また、元国会議長でありながら、性犯罪で有罪判決を受けたという事実は、韓国社会に大きな衝撃を与え、政治家の資質や責任について改めて考えるきっかけとなりました。晩年はメディアへの露出も少なく、2021年に妻を亡くしたことが報道されたのみでした。韓国の元国会議長には、国立墓地に埋葬される資格がありますが、性犯罪の有罪判決により、朴氏はその資格を失ったと考えられています。彼の功績と罪状は、歴史の中で永く議論されることでしょう。彼の政治活動、特に国会議長在任中の出来事や、その後のスキャンダルによる転落は、韓国政治史における重要な事例として記憶されています。

エピソード：ネロナンブル

政治用語「ネロナンブル」(泥棒猫)を最初に用いた人物として知られています。1996年の総選挙後、与党が野党議員をスカウトして過半数を確保したことに対し、野党が批判した際に、朴氏が野党も同様の行為を行っていると反論する際に用いた言葉として有名です。

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