杉の革命

杉の革命（Cedar Revolution）

杉の革命は、2005年2月14日に発生したラフィーク・ハリーリー前首相の暗殺を契機に、レバノン（主にベイルート）を中心に起こった一連のデモや市民運動を指します。この運動は、長年にわたるシリアの政治的影響力からの脱却と、レバノンの自主独立を求める国民の強い意志を示すものでした。

革命の目標

杉の革命の主な目標は以下の通りでした。

シリア軍のレバノンからの完全撤退（1975年から約30年間駐留）
国際機関によるハリーリー暗殺の徹底的な調査
治安維持機構の確立
自由かつ公正な選挙を通じた議会の設置
ミシェル・アウンの帰国とサミール・ジャアジャアの釈放

これらの目標は、レバノン国民が長年抱いてきた自由と独立への渇望を具現化したものであり、宗派を超えた国民の団結を促しました。

革命の背景と展開

ハリーリー前首相の暗殺後、レバノン国内ではシリアの関与が疑われ、大規模な抗議デモが発生しました。当初、シリアは14,000人もの軍隊と諜報機関員をレバノンに駐留させていましたが、国民の強い抵抗と国際社会からの圧力の高まりを受け、2005年4月27日までに完全撤退を余儀なくされました。

デモでは、白と赤のスカーフや青いリボンがシリアへの反対を象徴するシンボルとして用いられ、「自由、主権、独立」や「真実、自由、国民の団結」といったスローガンが掲げられました。

名前の由来

「杉の革命」という名称は、アメリカの外交官ポーラ・ジョン・ドブリアンスキーによって名付けられました。これは、グルジアのバラ革命やウクライナのオレンジ革命など、当時の東欧や中東で相次いで起こった民主化運動との連関を示すものでした。また、レバノンの国旗に描かれているレバノン杉は、国の象徴であり、国民のアイデンティティを強く表すものとして、革命の名称に採用されました。

一部では、「杉の春」という言葉も用いられ、これはプラハの春を意識したもので、政治的自由を求める国民の願いを反映していました。

参加政党

杉の革命には、様々な政治勢力が参加しました。

レバノン民主主義左派運動
自由愛国運動
未来運動
レバノン軍団
進歩社会党

これらの政党は、宗派や思想の違いを超えて、シリアの支配からの脱却という共通の目標に向かって協力しました。

革命の発端

革命の直接的なきっかけは、2005年2月14日にベイルートで発生したハリーリー前首相の暗殺事件でした。この爆破事件により、21人が死亡し、100人以上が負傷しました。事件後、シリア政府の関与が疑われ、レバノン国内で大規模な反シリアデモが発生しました。

国際社会の反応

ハリーリー暗殺は、国際社会からのシリアに対する圧力を高める要因となりました。アメリカやフランスは暗殺を強く非難し、シリア軍のレバノンからの撤退を求める国連決議1559の遵守を要求しました。国連は調査団を派遣し、レバノンの治安組織の不備やシリアの関与の可能性を示唆する報告書を発表しました。

革命の成果とその後

杉の革命の結果、シリア軍は2005年4月26日にレバノンから完全撤退しました。しかし、その後もレバノンでは政治的な混乱が続き、親シリア派と反シリア派の対立が激化しました。2005年以降、レバノンでは政治家やジャーナリストの暗殺事件が相次ぎ、国内の不安定な状況が続きました。

杉の革命は、レバノンの民主化と自主独立に向けた重要な一歩となりましたが、その後の政治的混乱や宗派対立など、多くの課題を残しました。しかし、この革命を通じて、レバノン国民の自由と主権を求める強い意志が示され、その精神は今もなお、レバノンの政治と社会に影響を与え続けています。

もう一度検索