ラフィーク・ハリーリー

ラフィーク・ハリーリー：レバノンの復興に尽力した首相の生涯

ラフィーク・バハーッディーン・アル＝ハリーリー（1944年 - 2005年）は、レバノンの政治と経済に大きな足跡を残した人物です。実業家として成功を収めた後、政治家へと転身し、二度にわたりレバノンの首相を務めました。しかし、その輝かしい経歴の裏で、暗殺という悲劇的な結末を迎えることになります。

生い立ちと実業家としての成功

ハリーリーは、スンナ派ムスリムとしてレバノンのサイダで生まれました。ベイルートの大学で学んだ後、サウジアラビアへ移住。教師を経て、建設会社で働くことになります。1971年（または1969年）には、自ら建築会社「シコネスト」を設立し、実業家としての道を歩み始めました。

1970年代のサウジアラビアは、原油価格の高騰により空前の建築ブームに沸いており、ハリーリーの会社は急速に成長。彼はサウジアラビアの建築業界で頭角を現し、1978年には「サウジ・オジェ社」を設立。同社をアラブ諸国でも有数の国際的な建設会社へと成長させました。1980年代には、『フォーブス』の富豪ランキングで上位100位に入るほどの資産家となりました。

レバノンへの貢献

サウジアラビアで成功を収めたハリーリーは、サウジ政府との関係を深める一方で、母国レバノンの復興にも尽力しました。1979年にはハリーリー基金を設立し、レバノン出身の学生を対象とした奨学金事業を開始。国内外で学ぶ多くの学生を支援しました。1982年にはオジェ・レバノン社を設立し、内戦で荒廃したベイルートやサイダなどの都市で復興事業を実施。病院の建設や学校の設立など、様々な形でレバノンの復興に貢献しました。

政界進出と首相としての業績

レバノン内戦が終結した1990年、ハリーリーはレバノンへ帰国し、内戦後の国家再建に参加しました。1992年から1998年、2000年から2004年までの二度にわたり、首相を務めました。実業家として培った経験を生かし、海外からの復興支援資金の獲得に尽力。その手腕を発揮しました。1996年の選挙では、ベイルート選挙区から出馬し、最多得票で当選。国会議員としても活躍しました。

首相として、ハリーリーは宗派対立の克服とレバノン人の統一を訴え、内戦からの復興に尽力しました。しかし、復興事業に自身の建設会社が関わっていたため、利益相反との批判も存在します。また、サウジアラビアとの密接な関係から、「サウジアラビアの手先」と批判されることもありました。

暗殺事件とその後

2004年、シリア軍の駐留問題などを巡り政局が混乱する中、ハリーリーは首相を辞任しました。そして2005年2月14日、ベイルート市内を走行中に爆弾テロに遭い、暗殺されました。この事件は、レバノン国内に大きな衝撃を与え、シリア軍の撤退を求める大規模な抗議活動「杉の革命」へと発展しました。最終的に、シリア軍はレバノンから完全撤退することになりました。

ハリーリー暗殺事件の真相を究明するため、国連は「レバノン特別法廷」を設置。2020年には、ヒズボラの構成員に有罪判決が下されましたが、事件の全容解明には至っていません。

ラフィーク・ハリーリーは、レバノンの復興に尽力した一方で、多くの批判も受けた人物でした。彼の功績と批判、そして暗殺事件は、レバノンの歴史において重要な意味を持っています。

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