杉尾拓郎

杉尾 拓郎（すぎお たくろう）

1986年10月3日、熊本県熊本市に生まれた杉尾拓郎氏は、左投げ左打ちの野球選手であり、指導者としても活動しています。投手と内野手のポジションをこなすなど、そのキャリアは国内外の多様な環境での挑戦に彩られています。

若き日の決断と独立リーグでの第一歩

高校を卒業後、九州共立大学へ進学し野球部に所属しましたが、野手から投手への転向を目指す中で、より集中的な自主練習に時間を費やすため、大学在籍のまま野球部を退部するという珍しい道を選びました。大学を卒業後、四国・九州アイランドリーグ（現在の四国アイランドリーグplus）の香川オリーブガイナーズに入団し、独立リーグの舞台でキャリアをスタートさせました。しかし、2010年のシーズン途中に戦力外通告を受け、チームを去ることになります。

海外への挑戦と帰郷

香川退団後、単身台湾に渡り、現地のプロ野球球団の入団テストを受けましたが、「若すぎる」という理由で見送られました。帰国後は地元熊本に戻り、海外での再挑戦を目指して資金を貯める日々を送ります。この期間、2013年には結婚。また、並行して重光産業が運営する軟式野球チーム、味千拉麺野球部に約2年半所属し、硬式とは異なる環境でも野球を続けました。

欧州リーグでの活躍

2014年、杉尾氏はオーストリアの野球リーグ、オーストリアン・ベースボール・リーグ2部のハード・ブルズに入団。ここでは選手としてプレーするだけでなく、監督も兼任するという重要な役割を担いました。投手として10試合に登板し、67回3分の2を投げ、7勝3敗、防御率1.46、62奪三振、16四球という素晴らしい成績を残し、チームを牽引しました。

翌2015年には、ドイツ・ブンデスリーガのケルン・カージナルスへ移籍し、ドイツの舞台でも腕を振るいました。このシーズン終了後、オランダリーグでのプレーも検討しましたが、当時の国際情勢（イスラム国の影響）を考慮し、断念せざるを得ませんでした。

再び独立リーグ、そして台湾社会人野球

2016年9月、杉尾氏は日本の独立リーグであるBASEBALL FIRST LEAGUE（現：さわかみ関西独立リーグ）の兵庫ブルーサンダーズ（現：兵庫ブレイバーズ）に入団しました。チームの年間チャンピオンシップでは重要な試合で先発を任され、年間優勝を決めた第4戦では勝利投手となるなど、チームの栄光に大きく貢献しました。この兵庫時代、チームの運営方針から給与が原則支給されない状況下でプレーしており、杉尾氏は家族を熊本に残して単身赴任。妻がヤクルトレディとして働き、家計を支えるという献身的なサポートがありました。2017年シーズンをもって兵庫を退団します。

2018年には、再び海外へ。台湾の社会人野球チーム、台湾人寿（台中市成棒隊）に加入しましたが、期待された結果を残せず、わずか数ヶ月で退団となりました。

オーストリアへの帰還と二刀流

台湾人寿を退団し日本に戻っていた杉尾氏に、すぐに古巣であるオーストリアのハード・ブルズから声がかかります。再びオーストリアの地を踏んだ杉尾氏は、投手としてだけでなく内野手としてもプレーする「二刀流」に挑戦。国内外の様々な環境で培った経験を活かし、新たなスタイルを確立しました。

日本での軟式野球復帰と指導者への道

2019年からは、6年ぶりに日本の軟式野球界に戻り、再び味千拉麺野球部でプレーしました。この年の西日本軟式野球大会では、リリーフ投手としてチームの優勝に貢献。硬式、独立リーグ、海外、軟式と、多岐にわたるカテゴリーでのプレー経験を持つ稀有な存在となりました。

そして2024年12月13日、九州アジアリーグに新規参入する宮崎サンシャインズの投手コーチに就任することが発表されました。当初は専任コーチとしての発表でしたが、2025年シーズン開幕前の3月1日には、選手を兼任することも発表され、プロ野球の世界で選手兼任コーチという形で新たなキャリアを歩み始めています。国内外を股にかけた波乱万丈な現役生活を経て、今後はその豊富な経験を若手選手の指導に活かしつつ、自身も再びマウンドやグラウンドに立つことになります。彼の今後の活躍、そして指導者としての手腕に注目が集まります。

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