杉崎里子
杉崎 里子（すぎさき さとこ）は、1942年12月24日に大分県北海部郡佐賀関町（現在の佐賀関は後に大分市の一部となる）に生まれ、1997年7月20日に54歳で没した日本の将棋女流棋士です。旧女流棋士番号は7、最終段位は追贈による女流四段でした。将棋棋士としての活動に加え、観戦記者、将棋講座講師としても活躍し、また実業家として「和洋裁の店サトコ」を経営し、「杉崎里子和洋裁教室」を亡くなるまで運営しました。
生家は300年続く呉服屋「株式会社平野屋」でしたが、里子氏が生まれた頃から家業は傾き始め、同業者の負債肩代わりなども重なり、多感な時期に実家の倒産を経験しました。このような逆境にもかかわらず、その明るく前向きな性格は生涯変わることがありませんでした。岩田学園高等部在学中には地元のミス・コンテストで優勝しますが、長兄の意向を受け県大会への出場は見送りました。結婚し一女をもうけますが、自身の体調不良が原因で離縁に至るという、さらなる苦難も経験しています。
様々な職を経て、得意な裁縫を仕事にすることを志し、別府女子短期大学（後の別府溝部学園短期大学）被服科に入学。働きながら学業を続け、卒業しました。幼い頃に父や兄、弟と将棋に親しんだ経験はありましたが、小学校進学後に母から止められ、茶道や華道など「娘らしい」稽古事に打ち込む生活を送っていました。しかし、短大在学中に教育実習で訪れた先の近くにあった将棋クラブで指し始めたことをきっかけに、再び将棋への情熱が再燃します。この頃、三ヶ尻武五段に師事し、被服科の学びと将棋の道に情熱を注ぐ日々を送りました。
短大卒業後、母校の研究科を修了し助手に就任。「教師になったのだから将棋は控えよう」と決意しますが、1970年に退職し「和洋裁の店サトコ」を大分市に開店した後、再び将棋の魅力に深く引き込まれます。1972年、1973年と2年連続で全国女流アマ準名人となり、1975年にはプロ一級に昇段し、大分県で初めての女流プロ棋士となりました。棋風は「攻め」を特徴とし、主に居飛車を駆使して、相手に攻められても守りに回らず攻め返すことを信条としました。1984年に女流二段で現役を引退しました。
将棋の対局者として活動する傍ら、短大助手時代の1969年からは地元の「大分合同新聞」で将棋欄の観戦記者としても活動を開始しました。観戦記では、対局者一人一人の長所を見出し、温かい筆致で勝負の綾を描写することを特徴とし、この仕事は亡くなるまで続けられました。
杉崎氏は、大分県におけるアマチュア将棋の普及に多大な貢献をしました。幼少期の経験から、女性であるゆえに対戦相手に恵まれなかった反省を踏まえ、全国に先駆けて1977年に子ども棋戦を立ち上げました（主催は大分合同新聞社）。これは日本将棋連盟が主催する子ども棋戦が始まるおよそ20年も前のことでした。また、「大分合同豆棋士将棋大会」や「大分合同県下職域対抗大会」などの棋戦を提案し、幅広い層への将棋の浸透を図りました。将棋大会においては、子供たちが安心して参加できるよう、会場を禁煙にするなど、細部にわたる心遣いを見せました。将棋教室だけでなく、和洋裁教室でも多くの弟子を育てています。
自身が将棋人として最も困難だった仕事として、1991年に大分県で初めて開催された将棋の最高位戦である第4期竜王戦七番勝負第3局の裏方業務を挙げています。「日本一」を決める対局を大分市で一般公開できることに意義を感じていましたが、当初の集まりは芳しくありませんでした。しかし、大会当日は予想をはるかに超える人々が会場に詰めかけ、大きな感動を覚えたと語っています。
棋士として知られるようになり、料亭などに招かれる機会が増えた際のエピソードも残されています。たまたま訪れた料亭で「見慣れた皿がある」と感じ、底を見たところ「平野屋」の銘が入っていたことに気づき、「うちの皿だったのに」と悔しくてたまらなかったと話しています。この経験から、「万が一、生活に余裕ができても、家具や食器には絶対にお金をかけまい」と心に決めたと言います。このようなエピソードは、実家の没落という経験が彼女の価値観に深く影響を与えたことを示しています。
将棋人としての功績が認められ、1996年11月には棋界功労賞を受賞。1997年3月には大分合同新聞社賞も受賞しました。しかし、そのわずか数か月後の1997年7月20日、第五十一期大分合同アマ将棋名人戦の打ち上げ中に体調を崩し、病院に運ばれましたが、間もなく死去しました。享年54でした。死因は誤嚥性肺炎による窒息死とされています（発表は肺水腫）。
死去直前には、別府に建設予定の新しい高層マンションの高層階を購入する決断をし、友人に「私は、空を買うことに決めたのよ」と楽しそうに語っていたらしく、周囲からは死の気配が全く感じられなかったと言います。そのため、多くの人にとって、杉崎里子氏の突然の死は受け入れがたい出来事でした。一方で、住んでいた大分市内のマンションでは、亡くなる前、一人で歩いている時に肩を落とし寂しそうに見えることも多かった、という目撃談も語られています。
プロ入り：1975年9月（女流1級）
昇段履歴：1984年（女流二段、引退）、1993年（女流三段）、1997年8月（女流四段、追贈）
生家は300年続く呉服屋「株式会社平野屋」でしたが、里子氏が生まれた頃から家業は傾き始め、同業者の負債肩代わりなども重なり、多感な時期に実家の倒産を経験しました。このような逆境にもかかわらず、その明るく前向きな性格は生涯変わることがありませんでした。岩田学園高等部在学中には地元のミス・コンテストで優勝しますが、長兄の意向を受け県大会への出場は見送りました。結婚し一女をもうけますが、自身の体調不良が原因で離縁に至るという、さらなる苦難も経験しています。
様々な職を経て、得意な裁縫を仕事にすることを志し、別府女子短期大学（後の別府溝部学園短期大学）被服科に入学。働きながら学業を続け、卒業しました。幼い頃に父や兄、弟と将棋に親しんだ経験はありましたが、小学校進学後に母から止められ、茶道や華道など「娘らしい」稽古事に打ち込む生活を送っていました。しかし、短大在学中に教育実習で訪れた先の近くにあった将棋クラブで指し始めたことをきっかけに、再び将棋への情熱が再燃します。この頃、三ヶ尻武五段に師事し、被服科の学びと将棋の道に情熱を注ぐ日々を送りました。
短大卒業後、母校の研究科を修了し助手に就任。「教師になったのだから将棋は控えよう」と決意しますが、1970年に退職し「和洋裁の店サトコ」を大分市に開店した後、再び将棋の魅力に深く引き込まれます。1972年、1973年と2年連続で全国女流アマ準名人となり、1975年にはプロ一級に昇段し、大分県で初めての女流プロ棋士となりました。棋風は「攻め」を特徴とし、主に居飛車を駆使して、相手に攻められても守りに回らず攻め返すことを信条としました。1984年に女流二段で現役を引退しました。
将棋の対局者として活動する傍ら、短大助手時代の1969年からは地元の「大分合同新聞」で将棋欄の観戦記者としても活動を開始しました。観戦記では、対局者一人一人の長所を見出し、温かい筆致で勝負の綾を描写することを特徴とし、この仕事は亡くなるまで続けられました。
杉崎氏は、大分県におけるアマチュア将棋の普及に多大な貢献をしました。幼少期の経験から、女性であるゆえに対戦相手に恵まれなかった反省を踏まえ、全国に先駆けて1977年に子ども棋戦を立ち上げました（主催は大分合同新聞社）。これは日本将棋連盟が主催する子ども棋戦が始まるおよそ20年も前のことでした。また、「大分合同豆棋士将棋大会」や「大分合同県下職域対抗大会」などの棋戦を提案し、幅広い層への将棋の浸透を図りました。将棋大会においては、子供たちが安心して参加できるよう、会場を禁煙にするなど、細部にわたる心遣いを見せました。将棋教室だけでなく、和洋裁教室でも多くの弟子を育てています。
自身が将棋人として最も困難だった仕事として、1991年に大分県で初めて開催された将棋の最高位戦である第4期竜王戦七番勝負第3局の裏方業務を挙げています。「日本一」を決める対局を大分市で一般公開できることに意義を感じていましたが、当初の集まりは芳しくありませんでした。しかし、大会当日は予想をはるかに超える人々が会場に詰めかけ、大きな感動を覚えたと語っています。
棋士として知られるようになり、料亭などに招かれる機会が増えた際のエピソードも残されています。たまたま訪れた料亭で「見慣れた皿がある」と感じ、底を見たところ「平野屋」の銘が入っていたことに気づき、「うちの皿だったのに」と悔しくてたまらなかったと話しています。この経験から、「万が一、生活に余裕ができても、家具や食器には絶対にお金をかけまい」と心に決めたと言います。このようなエピソードは、実家の没落という経験が彼女の価値観に深く影響を与えたことを示しています。
将棋人としての功績が認められ、1996年11月には棋界功労賞を受賞。1997年3月には大分合同新聞社賞も受賞しました。しかし、そのわずか数か月後の1997年7月20日、第五十一期大分合同アマ将棋名人戦の打ち上げ中に体調を崩し、病院に運ばれましたが、間もなく死去しました。享年54でした。死因は誤嚥性肺炎による窒息死とされています（発表は肺水腫）。
死去直前には、別府に建設予定の新しい高層マンションの高層階を購入する決断をし、友人に「私は、空を買うことに決めたのよ」と楽しそうに語っていたらしく、周囲からは死の気配が全く感じられなかったと言います。そのため、多くの人にとって、杉崎里子氏の突然の死は受け入れがたい出来事でした。一方で、住んでいた大分市内のマンションでは、亡くなる前、一人で歩いている時に肩を落とし寂しそうに見えることも多かった、という目撃談も語られています。
プロ入り：1975年9月（女流1級）
昇段履歴：1984年（女流二段、引退）、1993年（女流三段）、1997年8月（女流四段、追贈）
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