杉本正美

杉本 正美

杉本 正美（すぎもと まさみ、1936年 - ）氏は、日本の環境デザインおよび造園学分野における第一人者です。農学博士号を持ち、特にランドスケープデザイン、景観計画、緑地計画を専門としています。長年にわたり教育機関で教鞭を執り、九州大学、旧九州芸術工科大学、神戸芸術工科大学において名誉教授の称号を得ています。滋賀県出身。

経歴と学術活動

杉本氏は大阪府立大学農学部園芸学科を卒業後、同大学の大学院修士課程を修了せず、キャリアの第一歩を踏み出しました。その後、カナダのレスブリッジ市役所での勤務を経て、1972年に母校である大阪府立大学農学部の助教授に就任し、学術の世界に身を置きました。1983年には、当時、芸術工学の先進的な研究教育機関であった九州芸術工科大学（現在の九州大学芸術工学部）の芸術工学部教授、および九州大学大学院芸術工学研究院教授に迎えられました。この間には、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校で客員研究員として滞在し、国際的な視点からの研究も深めています。2000年からは神戸芸術工科大学の環境デザイン学部教授として教鞭を執り、同大学では環境デザイン学科主任や大学院の指導も担当するなど、後進の育成に尽力しました。現在に至るまで、これらの教育機関での経験を通じて、環境デザイン分野における理論と実践の両面から多大な貢献を続けています。

主要なプロジェクトへの関与

杉本氏の専門知識は、教育・研究活動のみならず、実際の景観づくりや都市計画にも活かされています。数多くの重要なプロジェクトに関与しており、その多様な取り組みは日本各地の景観形成に影響を与えています。主な実績としては、神戸市の諏訪山公園内にあるビーナステラスに設置された「愛の鍵モニュメント」の設計・監修、北九州市の到津の森公園の整備、福岡市の歴史的遺産である鴻臚館跡の整備事業、都市計画道路城内線西の御門橋周辺の景観整備、古代の防御施設である福岡県水城跡の整備事業などが挙げられます。さらに、国際親善の一環として行われた日加友好日本庭園の作庭にも携わっており、国内外でその手腕を発揮しています。これらのプロジェクトを通じて、歴史的遺産の保全と現代的な都市景観の調和、自然と共生する空間の創出など、幅広い課題に取り組みました。

社会的活動と栄誉

杉本氏は学術界および実務界での活動に加え、各種委員会の委員としても社会に貢献しています。宗像市史跡保存管理推進委員会の委員として地域の歴史遺産保護に携わったほか、神戸市公園緑地審議会委員として都市の緑地政策に関する提言を行いました。また、造園分野の主要な学術団体である公益社団法人日本造園学会では、平成4年度にその関西支部長を務めました。長年の功績が認められ、平成19年度には日本造園学会より上原敬二賞を受賞しています。これは造園学および造園技術の発展に特に顕著な貢献をした個人に贈られる、この分野で最も権威ある賞の一つです。さらに、平成27年11月には、多年にわたる公共的な職務への貢献に対し、日本国政府より瑞宝中綬章を授与されました。これらの栄誉は、杉本氏が日本の環境デザイン、造園学、そして景観計画の発展に果たした役割の大きさを物語っています。教育者、研究者、そして実践者として、杉本氏のキャリアは現代日本のランドスケープを形作る上で重要な足跡を残しています。

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