李政道

李政道（り せいどう、Tsung-Dao Lee、1926年11月24日 - 2024年8月4日）は、中国にルーツを持つアメリカの著名な物理学者です。彼の研究は素粒子物理学の分野に革命をもたらし、特にパリティ対称性の破れの発見は、20世紀の物理学における重要な転換点の一つとされています。

生い立ちと学歴

李政道は1926年に中国で生まれ、江西贛縣基督教聯合中学校を卒業後、浙江大学に進学しました。しかし、第二次世界大戦の影響で学業は中断を余儀なくされ、その後、西南聯合大学に転入しました。終戦後の1946年、彼はアメリカに渡り、シカゴ大学でエンリコ・フェルミのもとで研究に励み、博士号を取得しました。この時期、同門には後にノーベル賞を共同受賞することになる楊振寧がいました。

研究活動

李政道は、1950年に結婚し、二人の息子をもうけました。研究者としてのキャリアは、カリフォルニア大学やプリンストン高等研究所を経て、1953年にコロンビア大学の助教授に就任し、1956年には29歳という若さで教授に昇進しました。同1956年、李政道は楊振寧と共に、素粒子間の弱い相互作用においてパリティ（対称性）が保存されないという画期的な発見をしました。このパリティ対称性の破れに関する論文は「フィジカル・レビュー」誌に発表され、直ちに実験的に検証されました。この発見は物理学界に大きな衝撃を与え、翌1957年には、この業績によりノーベル物理学賞を共同で受賞しました。さらに同年、アルバート・アインシュタイン賞も受賞し、中国系としては初のノーベル賞受賞者となりました。彼は当時、中華民国籍でしたが、1962年にアメリカ市民権を取得しました。

李政道の研究はパリティ対称性の破れにとどまらず、赤外発散におけるKLN（木下-Lee-Nauenberg）定理や非トポロジカルソリトンに関する研究でも知られています。これらの研究は、素粒子物理学の理論的枠組みを深く理解する上で不可欠な貢献となりました。

中国との関係

1972年以降、李政道夫妻は中国を度々訪問し、周恩来や毛沢東といった中国の指導者と会見しました。彼は、中国の科学教育の発展にも尽力し、大学生を対象にした奨学金を設立するなど、後進の育成にも力を注ぎました。1985年には、北京大学から名誉博士号を授与されました。彼の功績は、祖国中国でも高く評価されています。

その他の活動

1997年、李政道はブルックヘブン国立研究所内に設置された理研BNL研究センターの初代センター長に就任（兼任）。2003年からは名誉センター長・理研研究顧問として、研究活動を支援しました。また、2006年には、日本における研究者の指導育成、そして日米間の学術交流の促進に貢献したとして、旭日重光章が授与されました。これは、彼の国際的な貢献を称えるものでした。

死去

李政道は2024年8月4日にサンフランシスコで逝去しました。享年98歳（数え年、実年齢は97歳）。彼の生涯は、物理学の発展に貢献しただけでなく、国際的な学術交流の促進、そして祖国への貢献を通して、多くの人々に影響を与えました。

李政道の業績は、現代物理学の基礎を築いただけでなく、科学者としての模範を示し、後世に多大な遺産を残しました。彼の研究と貢献は、今後も物理学の発展に大きな影響を与え続けるでしょう。

彼の公式ホームページやノーベル賞の公式ページには、彼の詳細な経歴や研究内容が掲載されています。また、ブルックヘブン国立研究所やコロンビア大学のホームページでも、彼の業績に関する情報を得ることができます。

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