李時珍

李時珍（り じちん）

李時珍（1518年7月3日 - 1593年）は、明代に活躍した医師であり、本草学者です。字は東璧、号は瀕湖山人。

生涯

李時珍は、代々医師の家系である黄州府蘄州（現在の湖北省黄岡市蘄春県蘄州鎮）で生まれました。幼い頃から、父である李言聞（字は子郁、号は月池）の助手として働き、医学に触れて育ちました。父は名医であり、『医学八脈考』や『人参伝』などの医学書を執筆するほどでしたが、当時の医師の社会的身分の低さから、息子には科挙に合格して官僚になることを望んでいました。しかし、病弱だった李時珍は医学への思いを断ち切れず、23歳の時に父に懇願し、医学を学ぶことを許されました。

医学の才能を開花させた李時珍は、数年後には湖北地方で名医として知られるようになり、明の皇族である楚王も彼を頼るほどでした。34歳の時、彼は医学の最高機関である「太医院」に推薦され、北京に赴きます。しかし、中央の役人としての仕事は性に合わず、1年後には帰郷し、再び地元で医業を始めました。

研究内容・業績・評価

中国の本草学は、『神農本草経』を原典として発展してきましたが、時代が下るにつれて、記述の誤りや重複、遺漏が目立つようになっていました。李時珍は、この状況を憂慮し、新たな本草学書の編纂を決意しました。800種にも及ぶ書物を参考にし、自らも多くの薬物を収集・研究しました。26年の歳月を費やし、3回の校訂を経て、61歳の時に『本草綱目』全52巻190万余字を完成させました。

『本草綱目』は、従来の『神農本草経』の内容を訂正した点などから、激しい批判を受け、出版は困難を極めました。しかし、李時珍を理解する人々の尽力により、1593年に出版が実現し、皇帝への献上も叶いました。しかし、その直後に李時珍は急死してしまいます。献上された『本草綱目』は、万暦帝から賞賛を受け、出版が促進されました。この本は中国国内だけでなく、日本などの周辺諸国やヨーロッパにも広まり、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えました。

李時珍は、扁鵲、張機、華佗と共に、中国古代四大名医の一人として数えられています。

著書

『本草綱目』
『瀕湖脈学』
* 『奇経八脈考』

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