李晋

李 晋の生涯

李 晋（り しん）は1921年8月18日に、李王世子垠と妃・方子女王の第一子として誕生しました。母は日本の皇族であり、父は朝鮮の王族という独特のバックグラウンドを持っていました。彼の誕生に際し、皇族と同様の礼を受け、敬称として「殿下」が用いられることとなりました。この時期、王公家軌範が未整備であったため、王公族の身分はまだ明確には定義されていなかったのです。そのため、彼の誕生は注目を集めました。

晋の名前「晋」は1921年8月24日に名付けられました。誕生を祝う多くの行事が行われ、李 晋は「日鮮融合」の象徴と見なされました。生まれてすぐに乳母が置かれましたが、やがて母方子女王自らが母乳を与えることになりました。これは母子の強い絆を示すものでした。

1922年の春、李世子夫妻は生後8か月の晋を連れて故郷の朝鮮を訪れることにしました。訪問の目的は、晋が李王（純宗）と対面することでした。この長旅は方子妃にとって不安なものでしたが、彼女は無事に2週間の行事を終えました。

帰国の直前、5月8日には仁政殿で別離の晩餐会が開かれました。晩餐会が終わった後、晋の容態に異変が生じました。二人が会場を出る直前、晋が突然苦しみだし、医師たちが集まる事態となりました。その翌日、彼の容態は悪化し、急性消化不良として5月11日15時12分に晋は他界しました。

晋の死は多くの憶測を呼びました。公式には急性消化不良とされていましたが、報道が自由でなかった京城では、陰謀説も浮上しました。方子妃は自らの子供の死を受け入れられず、喪失感に苛まれました。彼女は「自分が死んだ方がどんなによいだろう」と述べ、冷たくなった晋の遺体を抱きしめて涙したと伝えられています。

その後、方子妃は不安と悲しみに包まれた日々を送りますが、ある日彼女は短歌を詠むことで夫を鼓舞しようとしました。彼女は「すえ長く こまの都に しずまりて 人と国とを守れ おさな子」と詠み、立ち直るための努力をしました。

李晋の葬儀は朝鮮式で執り行われ、彼は京城の崇仁園に埋葬されました。これは祖母、純献皇貴妃が埋葬された場所と接しており、彼の一族の歴史を象徴する場所です。その後、夫婦は東京に戻り、彼の遺品が持ち帰られました。8月には李王世子邸に神祠が設けられ、晋の記憶が残されることとなりました。

この短い生涯の中で李 晋は、多くの期待を背負って生まれ、再会の旅を果たし、そして悲劇的な死を迎えました。その人生は、日韓の歴史的な背景を象徴するものであり、当時の社会や文化について考える手がかりを提供しています。

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