李潤澤

李 潤澤（イ・ユンテク）

李潤澤（イ・ユンテク、1952年生まれ、生まれは韓国の慶尚南道釜山市）は、詩人、劇作家、演出家として知られる重要な文化人物です。彼は韓国の伝統芸能と現代劇を融合させ、創造的な影響を与えてきました。しかし、彼のキャリアは、性的暴力の告発によって大きな転機を迎えました。

生い立ちと経歴

李潤澤は慶南高校で文在寅（第19代韓国大統領）と同級生であり、二人は強い絆を築きました。彼は韓国放送通信大学校を卒業後、27歳で詩人としての道を歩み始め、1986年に自身の劇団「演戯団コリペ」を設立しました。この劇団は、韓国の伝統演戯を現代の芸術として発展させ「文化ゲリラ」として評価されました。

彼は密陽市の廃校を利用して演劇村を設立し、俳優やスタッフと共に生活する共同体を築きました。これは朝鮮後期の大衆芸能集団「ナムサタンベ」に近い形態でした。代表作である『オグ-死の形式』は自身の監督により2003年に映画化され、彼の名は広く知られることとなりました。

政治活動と影響

李は2012年の韓国大統領選挙において、文在寅を支持する応援演説を行いました。この活動により、彼は朴槿恵政権下で「文化界のブラックリスト」に掲載されることとなりました。即ち、李の作品は文化芸術委員会から支援対象から外され、審査にも通過できない状況になりました。

性的暴力の告発

2018年に、李は過去における一連の性的暴行の事実が公にされました。彼は自身の劇団の女性団員に対して「マッサージ」と称し性的暴力を加え、拒否した者には差別的な扱いをし、役割から外す行為を行っていたと報じられています。さらには、彼の行為は組織内部で隠蔽されてきたことも明らかになりました。

この告発は韓国演劇界に衝撃を与え、彼の行動がその閉鎖的な構造の一部であるとの批判も起こりました。韓国演劇演出家協会は彼を永久除名とし、演戯団コリペの解体を決定。演劇村も閉鎖されることになりました。

法的な結果として、李は当局に拘束され、2018年9月には懲役6年が言い渡されました。このほか、80時間の性暴力治療プログラム受講と10年間の就職制限も課されました。

受賞歴と作品

李潤澤は数々の賞を受賞しており、1986年には「我々は、今ジェネバーへ行く」で大鐘賞脚本賞を受賞。1991年には東亜演劇賞で演出賞、作品賞を受賞しました。1995年には大山文学賞戯曲賞や百想芸術大賞を取得するなど、彼の作品は多くの評価を集めました。主な作品には『オグ、死の形式』『山越、ケトン』『ハムレット』『カイン』『バカ嫁』『兜率歌』『生きている間は、毎日が祝祭』『市民K』『問題的な人間、燕山』『ジーパンを履いたファウスト』などがあり、これらは韓国の演劇界に与えた影響を無視できません。

李の業績と同時に、彼の行動がもたらした影響は、韓国の芸術界における倫理的な問題を問う重要なきっかけとなりました。

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