李相得

李相得（イ・サンドゥク、1935年11月29日-2024年10月23日）は、韓国を代表する政治家でありながら、数々の汚職事件に関与したことで知られる実業家です。元大統領である李明博氏の兄として、その影響力と複雑な人生は、韓国現代史において特筆すべき存在と言えるでしょう。

日本大阪府で生まれ、終戦直後に家族と共に韓国の浦項へ帰国。陸軍士官学校に入学するも、後にソウル大学経済学部へ進学しました。卒業後、韓国ナイロン（コーロン）に入社。1977年から1982年にかけて代表取締役社長を務めるなど、企業経営において成功を収めました。

1988年、政界入りを果たし、国会議員を6期にわたって務めます。迎日郡、浦項市南区選挙区を地盤として、民主正義党、民主自由党、新韓国党、ハンナラ党といった、韓国を代表する政党に所属しました。国会では、政策委員長、院内総務、副議長などを歴任し、韓国の政治の中枢に深く関与しました。日韓議員連盟会長を務めるなど、日韓関係にも積極的に関わっていたことも特筆すべき点です。

しかし、その華々しい経歴とは裏腹に、李相得氏は数々の汚職事件に巻き込まれました。2011年には秘書名義の借名口座からの不正資金が明るみに出て、次期総選挙への不出馬を表明。その後、金融機関や企業からの巨額な違法資金受領の容疑で逮捕され、2013年には不法な政治資金を受け取った罪で懲役2年と高額の追徴金を科せられました。刑期を終えて出所後も、新たな不正に関与したとして検察の捜査を受け、2019年には国家情報院特殊活動費と不法資金収受の罪で懲役1年3か月の判決が確定しました。

李相得氏の成功と失墜は、韓国の高度経済成長と民主化という激動の時代を反映しています。コーロンでの成功は、韓国経済発展の象徴とも見なせます。一方、政治家としての活動では、権力と富への強い執着が、数々の汚職事件を引き起こしたと見られています。弟である李明博氏との関係性も、彼の政治活動や経済活動に大きな影響を与えたと考えられます。李氏の長女はLGグループの具滋斗氏の息子と、次女は元科学技術処長官の呉明氏の息子と結婚しており、韓国の財閥やエリート層との繋がりも強固でした。

2024年10月23日、ソウル大学校病院で死去。享年89歳でした。生前、故郷浦項に功徳碑が建立される予定でしたが、健康状態の悪化により延期されたまま、生涯を終えました。李相得氏の人生は、成功と挫折、栄光と汚名、そして韓国現代史の光と影を凝縮したようなものでした。彼の波乱に満ちた人生は、後世の人々にとって、多くの教訓と問いかけを残すでしょう。

李相得氏の経歴は、韓国の政治経済史における重要な一章であり、その功績と罪悪は、歴史の検証を待たねばなりません。彼の生き様は、権力と富、そしてその影の部分を深く考えさせる、複雑で魅力的な物語として語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索