李福男

李福男（イ・ボンナム）

李福男は、1555年6月28日に生まれ、1597年8月16日に没した李氏朝鮮時代の高名な武官です。字は綏甫（すいほ）、諡号（しごう）は忠壮（ちゅうそう）と追贈されました。本貫（ほんがん）は羽渓（うけい）。朝鮮王朝の軍部において重要な役割を担った李光軾（り こうしき）の曾孫にあたる家柄です。

武官としてのキャリア

李福男は、官僚登用のための試験である武科（ぶか）に合格し、武官としての道を歩み始めました。その能力と忠誠心は、後に行われる日本の侵攻に対する防衛戦で遺憾なく発揮されることになります。

文禄の役での活動

1592年に日本の豊臣秀吉によって文禄の役が勃発すると、当時羅州判官（なしゅうはんがん）であった李福男は、伏兵将（ふくへいしょう）に任ぜられ、戦線に加わりました。彼は全羅道（ぜんらどう）全州（ぜんしゅう）近辺で起きた熊峙（くまち）の戦いに参戦し、日本軍と激しい戦いを繰り広げました。しかし、戦況は朝鮮軍にとって不利に進み、彼はやむなく安徳院（あんとくいん）へと部隊を率いて撤退しました。

慶長の役と南原城への決意

1597年に再び日本の侵攻（慶長の役）が始まると、李福男は全羅兵使（ぜんらへいし）という全羅道の軍事を司る要職にありました。日本軍の再侵攻に対し、戦略的な要衝である南原城（なんげんじょう）を救援すべく出兵を決意します。しかし、混乱の中で多くの兵士が離散しており、彼の率いる部隊はわずか50名程度にまで激減していました。極めて困難な状況にもかかわらず、彼は南原城救援の使命を果たすべく、少ない兵力で進軍しました。

決死の入城

彼が南原に近づいた時には、すでに日本軍による城の包囲が始まっていました。通常であれば入城は不可能に近い状況でしたが、李福男は助防将（じょぼうしょう）の金敬老（きん けいろう）、山城別将（さんじょうべっしょう）の申浩（しん こう）らと共に、敢然として城内への突入を決行する道を選びます。彼らは決死の覚悟を示し、なんと鑼角（らかく）を吹き鳴らし、鼓（つづみ）を打ち響かせながら、万福寺（まんぷくじ）前の大通りを堂々と行進しました。予期せぬ彼らの大胆な行動に日本軍は驚き、見守る中で、一行は無事に南門から城内に入ることができたのです。

南原城の戦いと壮烈な最期

同年8月、南原城を巡る激しい攻防戦が勃発します。李福男は城の北門の守将として、最前線で兵を率い、粘り強く戦い続けました。多勢に無勢の中、朝鮮・明連合軍は善戦しましたが、城は陥落寸前の状況に追い込まれます。李福男は最後までその場を離れることなく、壮烈な討ち死にを遂げました。享年43歳でした。皮肉にも、この時、南原城の守備軍を率いていた明の主将・楊元（よう げん）は、城が落ちる直前に西門から脱出しています。李福男の最後まで城と運命を共にしたその忠義は、後世に語り継がれています。

もう一度検索