村山ませ子

村山ませ子（むらやま ませこ）は、1843年（天保14年）に生まれ、1920年（大正9年）11月22日に没した、幕末の江戸城大奥に仕えた女性です。彼女は、旗本・大岡孫右衛門の娘であり、大岡義方の孫、大奥御年寄の瀧山は叔母にあたり、勝海舟とははとこの関係にありました。女中時代は「ませ」と名乗っていました。

ませ子は、13代将軍・徳川家定の御台所である天璋院に仕え、御中臈（おちゅうろう）という役職に就きました。御中臈は、大奥内で奥女中の中でも比較的高い地位にあり、将軍の妻の身の回りの世話をする重要な役割を担っていました。しかし、文久3年（1863年）に暇を出され、一度大奥を離れます。

その後、ませ子は無給のまま大奥に復帰し、天璋院の飼い猫の世話をしていたと伝えられています。これは、彼女が天璋院に深く信頼されていたこと、そして大奥という特別な空間への強い愛着があったことを示唆しています。大奥は、女性たちが社会から隔絶された空間で生活を送る場所であり、その内部での人間関係や慣習は独特なものでした。

大奥が瓦解した後、ませ子は徳川慶喜の小姓であった村山鎮（むらやま しず）と結婚し、名を「ませ子」と改めました。この結婚は、激動の時代を生き抜いた二人の人生における大きな転換点となりました。

維新後、ませ子は、歴史家である三田村鳶魚（みたむら えんぎょ）から大奥についての詳細な取材を受けました。三田村は、様々な資料と証言に基づいて大奥の歴史を研究しており、ませ子の証言は、その研究において非常に重要な役割を果たしました。三田村の著作である『御殿女中』には、ませ子の証言を基にした大奥の様子が詳しく記述されており、大奥研究に大きく貢献しています。

村山ませ子の証言は、大奥という閉鎖的な空間で生きた女性たちの視点を知る上で、非常に貴重な資料です。彼女の語る言葉は、歴史の教科書だけでは知ることのできない、当時の人々の生活や感情を現代に伝えています。ませ子の証言は、歴史を立体的に捉え、より深く理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

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