束明神古墳

束明神古墳（つかみょうじんこふん）

束明神古墳は、奈良県高市郡高取町佐田に存在する古墳で、形状は八角形をしています。この古墳は、草壁皇子（岡宮天皇、第40代天武天皇の皇太子）の真陵と考えられる説が広く知られています。史跡としての指定は受けていません。

概要

この古墳は、奈良盆地の南部、真弓丘陵の南東側の尾根の南斜面に築かれており、1984年から1985年にかけて発掘調査が行われました。墳丘は、斜面の土を大きく削り取り、直径40メートルの平坦地を整地して、版築技術を用いて構築されています。墳形は八角形で、対角の長さは約30メートルに達します。

埋葬施設は横口式石槨と呼ばれるもので、南を向いて開口しています。特殊な凝灰岩の切石で出来ており、平面形は長方形、断面形は台形状を呈していると考えられています。内部には漆塗りの木棺が置かれていたと推定されています。発掘調査により、石槨内から人骨の一部や鉄釘などが発見されました。また、石槨の周囲からは須恵器も見つかっています。この古墳の築造時期は古墳時代の終わりにあたる7世紀末期と見られています。

古墳の実際の被葬者については明らかではありませんが、草壁皇子が埋葬されている可能性が指摘されています。草壁皇子は、天武天皇の第二皇子であり、もともと皇太子でしたが、689年に早世しました。彼には子どもや孫も多くおり、その多くが皇族として歴史に名を残しています。

埋葬施設の詳細

束明神古墳の埋葬施設である横口式石槨は、南方向に開口しており、凝灰岩の切石から構成されています。この石槨の平面形は長方形で、約3.06メートルの長さと2.12メートルの幅、推定高さが約2.5メートルです。使用されている石材は、方形に切り出されたもので、奥壁は垂直に積まれていますが、側壁は最初のうちだけ垂直に積まれ、その後内側に傾かせていく手法が取られています。

石槨の内部では、50本以上の鉄釘や漆膜の破片、棺金具などが発掘され、漆塗りの木棺が使われたことが示唆されています。同時に、石槨内で約10本の人の歯（青年期から壮年期の個体と推測される）が見つかり、石槨周辺からは須恵器も出土しています。

被葬者に関する考察

束明神古墳での被葬者は定かではありませんが、草壁皇子に関連付けられています。草壁皇子は第40代天武天皇の皇子であり、彼の墓については『日本書紀』には記載がありませんが、『万葉集』や『続日本紀』などではその存在が示唆されています。草壁皇子の墓は、長い間失われていたが、近年ではこの束明神古墳が彼の真の埋葬地であるとの信念が強まっています。

地元では草壁皇子を祭る伝承が残っており、墳丘の大規模な地形改変や石槨の構造からも、古墳の重要性が伺えます。また、古墳にかかわる様々な文献とも整合性が見られます。

現在の状況

発掘後、石槨は埋め戻されましたが、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館の前庭では、その復元石槨が展示されています。古墳の重要性や草壁皇子の歴史的背景を理解するための貴重な資料として、多くの人々に訪れられています。

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