来島達夫

来島 達夫

来島 達夫（きじま たつお）氏は、1954年9月22日に山口県下関市で生まれた日本の実業家です。長年にわたり西日本旅客鉄道（JR西日本）の経営に深く携わり、代表取締役社長などを歴任しました。現在は同社の顧問を務めるほか、交通文化振興財団の理事長も務めています。

生い立ちと国鉄入社

山口県立下関西高等学校で学び、その後九州大学法学部へ進学しました。法学部で研鑽を積み、1978年3月に大学を卒業後、同年4月には日本国有鉄道（国鉄）に入社。1987年4月の国鉄分割民営化に伴い、西日本旅客鉄道株式会社（JR西日本）へ移籍しました。

個人の信条として「人間万事塞翁が馬」を座右の銘としており、人生の出来事を冷静に受け止め、前向きに進む姿勢を表しています。健康のため、ウォーキングを趣味としています。

母校である山口県立下関西高等学校の卒業生による「旭陵同窓会」では関西支部の会計監査を務めています。同窓からは、小説家の船戸与一氏が先輩にあたり、後に外務大臣などを務める林芳正氏が後輩にあたるなど、各界で活躍する人物を輩出しています。

国鉄入社時の同期には、その後のJR各社でトップを務めることになる人材が揃っていました。JR東海の社長を務めた金子慎氏、JR東日本の社長を務めた深澤祐二氏、JR北海道の会長を務めた田浦芳孝氏らは、来島氏と同期入社です。

JR西日本でのキャリア

JR西日本での来島氏のキャリアは、特に人事部門での経験が長いことが特徴です。民営化直後の1987年4月には人事部勤労課副長に就任し、組織の根幹を支える人材マネジメントに関わりました。その後、広報室長（2002年6月）として対外コミュニケーションを担当し、執行役員人事部長（2006年6月）として再び人事部門の責任者を務めました。

経営の中枢に移ったのは、2009年6月に常務執行役員総合企画本部長に就任してからです。会社の経営戦略や計画策定を担い、同年10月からは東京本部長も兼務しました。2010年6月には取締役兼常務執行役員となり、経営判断の一員に加わります。そして、2012年6月には代表取締役副社長兼執行役員へと昇格しました。

福知山線事故対応と社長就任

代表取締役副社長在任中の2012年11月からは、JR福知山線脱線事故のご被害者対応本部長を兼務するという重責を担いました。これは、事故から時間を経てもなお続く、被害者の方々への支援や対話という、JR西日本にとって最も重要で困難な課題の一つに最前線で向き合うことを意味しました。この本部長職は、来島氏が社長に就任する2016年6月まで続けられました。

2016年6月、来島達夫氏は西日本旅客鉄道株式会社の代表取締役社長兼執行役員に就任しました。福知山線事故を受けて最重要課題となった「安全」の更なる追求と組織文化の改革、そして持続的な成長に向けた経営を担うこととなりました。最高経営責任者として約3年間経営を指揮した後、2019年12月には取締役副会長に就任しました。

退任後の活動

JR西日本の経営執行から退いた後も、来島氏はその経験と知見を活かしています。2021年6月からは同社顧問として、会社経営への助言を行っています。また、社外での活動も積極的に行っており、2020年6月からは大阪ガスの取締役に、2021年6月からは住友電気工業の監査役にも就任し、エネルギー分野やものづくり分野の企業経営にも関与しています。

長年にわたり日本の主要な社会インフラである鉄道事業に携わり、人事、企画、そして特に安全という公共性の高い分野で重責を担ってきた実業家として、来島達夫氏は現在も多角的な立場で社会に貢献しています。

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