東京オリンピック (映画)

『東京オリンピック』

『東京オリンピック』（とうきょうオリンピック、Tokyo Olympiad）は、1964年の東京オリンピックを記録した公式映画です。1965年3月20日に公開され、169分の上映時間を誇ります。この作品は、市川崑監督が主体となり、オリンピックの模様を美しく、またドラマティックに描き出しました。特に注目すべきは、彼がスポーツに関しての知識が乏しいながらも、その独自の視点から豊かな脚本と構成を実現した点です。

製作の背景

映画の企画は、元々黒澤明に話が持ち込まれ、準備が進められていました。しかし、ニュース映画協会内での対立や予算の問題から黒澤は降板。その後、他の監督たちを経て、市川崑に話が回りました。市川は大映との契約があったものの、最終的には総監督を引き受けることになりました。

市川がオリンピック映画協会の事務所を訪れた際、何も進んでいない状況に驚愕し、脚本を求める声に対して模索を始めました。彼は多くのスタッフと連携し、1963年開催の東京国際スポーツ大会の記録フィルムを参照しつつ、記録映画について学んでいきました。

シナリオ作り

シナリオには、和田夏十などの脚本家が参加し、全種目の決勝場面を取り入れることなどを目指しました。最初は3時間以内の上映を考えましたが、現実には多くの課題が浮かび上がり、全競技をABCランクに分類する方法が取られました。この段階で、選手や観客の心理を捉えるため、競技中以外の場面も意識的に撮影するようにしました。市川は、自身がスポーツに疎いことで、スポーツファンだけに向けたものではなく、一般観客にも響く作品にしようと努めたのです。

撮影と準備

復数の競技会場に異なる監督を配置し、彼自身は特定の競技にしか参加できない状況で、毎日の定期的な打ち合わせを通じて意識を統一しました。東京オリンピックという市川にとって重要なプロジェクトにおいて、彼の指導力と視点が映し出されています。

特筆すべきは、撮影において使用したカメラやレンズの数々です。実際の競技や街並みを捉えるため、さまざまな技術が駆使され、五輪の雰囲気をリアルに映し出しました。この作品は、色彩豊かなカラーワイドで制作され、高度な撮影技術が用いられました。

編集と公開

撮影が終わった後は、編集作業が本格化しました。当初は四ヶ月のスケジュールで行われる予定でしたが、予想以上に手間がかかり、正月を返上して急ピッチで進められました。フィルムの長さは約40万フィートに及び、そのすべてをモノクロで焼き付けるという独特の加工が施されました。クレジットタイトルについても、全スタッフの名前を表示する手法が取られる一方で、重要な役割を果たした市川と田口の名は別記されることとなりました。

1965年3月20日に公開され、この作品は日本国内で驚異的な収益を上げ、また社会現象をも引き起こしました。初めは懐疑的だった一般の意見も公開の頃には変わり、試写会には多くの観客が集まりました。

受賞

本作は多くの映画賞を受賞し、その評価を確固たるものにしました。カンヌ国際映画祭では批評家賞を受賞し、日本映画史上重要な作品として位置づけられました。また、教育現場でも多くの上映会が行われ、その影響力は計り知れないものとなりました。

まとめ

『東京オリンピック』は、日本映画を超えて、世界的にも名を馳せる作品として位置づけられています。市川崑監督の独自のアプローチが、ただの記録映画を逸脱した芸術性高い作品を生み出したと言えるでしょう。この映画は、オリンピックという壮大な舞台における人間の感情やドラマを見事に表現した、忘れがたい作品です。

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