東京ラウンド

東京ラウンド：世界貿易の自由化に向けた重要な一歩

東京ラウンドは、1973年から1979年にかけて、GATT（関税および貿易に関する一般協定）の下で実施された7回目の多角的貿易交渉です。1973年9月に東京で開催された閣僚会議で採択された東京宣言に基づいて開始されたため、この名で呼ばれています。102ヶ国が参加し、GATTの歴史において初めて、非関税措置の軽減に本格的に取り組んだことが大きな特徴です。

東京ラウンドの成果

東京ラウンドでは、以下の分野において国際協定が策定され、貿易の自由化に大きく貢献しました。

補助金・相殺関税
ダンピング防止税
民間航空機
政府調達
関税評価
輸入許可手続き
貿易の技術的障壁

これらの協定は、非関税障壁の軽減・撤廃に繋がり、世界貿易の円滑化に大きく寄与しました。

開催の背景

GATT体制下における6回目の多角的貿易交渉であるケネディ・ラウンドでは、鉱工業分野で平均35％、農業分野で平均22％の関税引き下げが実現し、大きな成果を上げました。しかし、1970年代に入ると、アメリカ合衆国の経済力が相対的に低下し、各国で保護貿易主義が台頭、EC（欧州共同体）も地域主義化の傾向を強めるなど、世界的に保護貿易の機運が高まり、自由貿易を掲げるGATT体制が揺らぎ始めました。

このような状況下で、日本、カナダ、オーストリアなどは、GATT、ひいては自由貿易体制を維持・強化するため、新たな国際ラウンドを早急に開始する必要性を訴えました。1971年4月の非公式総会以降、新ラウンド開始に向けた準備グループの設置を支持し、同年11月の第27回GATT総会でも、新国際ラウンドの早期開催について合意する必要性を主張しました。

当初、ECとアメリカは内部事情により消極的な姿勢でしたが、1971年12月のスミソニアン協定成立後、アメリカは一転して積極的な姿勢に転じました。日本およびECとの交渉の結果、1973年にGATTの枠内で新国際ラウンドを開始する旨の宣言が、日米間および米EC間で発表されました。この宣言の内容は、同年3月のGATT理事会において先進工業国間で合意されました。

1972年11月に開催された第28回GATT総会では、日本などの提唱に基づき、新国際ラウンドを同年開始するための締約国による意思確認と交渉準備委員会の設置が行われ、同時に翌年9月に閣僚レベルの会議を開催することが合意されました。

東京宣言

1973年9月12日から14日にかけて開催された閣僚レベル会議は、最終日の14日に「ガット閣僚会議東京宣言」（東京宣言）を発表し、交渉の正式な開始を宣言しました。東京宣言では、以下の目標が掲げられました。

1. 世界貿易の拡大と一層の自由化、及び世界の諸国民の生活水準と福祉の改善を達成すること
2. 開発途上国の発展の必要性を考慮し、開発途上国が外貨収益の大幅な増大、輸出の多様化、貿易の成長率の上昇を達成できるように、また、世界貿易の拡大にこれら諸国が参加する可能性の改善並びに、この拡大から生ずる利益の分配にあたり、可能な最大限度において、開発途上国関心産品の市場進出条件の実質的改善及び、適当な場合にはいつでも、一次産品の安定的な、衡平な、かつ、採算のとれる価格を達成するための措置を通じ、先進国と開発途上国との間のより良い均衡を達成できるように開発途上国の国際貿易にとつての追加的利益を確保すること

これらの目標を達成するため、東京宣言では、関税に関する交渉、非関税措置の軽減または廃止、多角的セーフガード・システムの妥当性の検討、農業分野の特殊性への配慮、熱帯産品の優先的取扱いなどが盛り込まれました。

交渉は工業品と農産物の双方を対象とし、関税、非関税障壁、その他の貿易を阻害する措置を対象としました。また、交渉は最恵国待遇条項を遵守し、相互の利益、相互の約束、全般的な相互主義の原則に基づいて行われることとされました。ただし、先進国は開発途上国に対し、関税その他の貿易に対する障害の軽減または廃止に関する約束について相互主義を期待しないこととされました。

閣僚は、開発途上国がその輸出収益を増大し、その経済発展を促進するために行なう努力を援助するために実施される特別措置及び、適当な場合には、開発途上国の関心産品又は分野に対して与えられるべき優先的配慮の必要性を認めました。閣僚は又、一般特恵制度の維持及び改善の重要性を認める。閣僚は更に、可能且つ適当な交渉分野において開発途上国にとって特別且つより有利な取扱いがなされる様な方法で、開発途上国に対し異った措置(differential measures)を適用することの重要性を認める。

閣僚は、後発開発途上国の特殊な状況及び問題に特別な配慮が与えられなければならないことを認め、これらの諸国が交渉において開発途上国の利益のためにとられるあらゆる一般的又は個々の措置との関係において特別な取り扱いを受けることを確保する必要性を強調しました。

まとめ

東京ラウンドは、世界貿易の自由化と多国間貿易体制の強化に大きく貢献した重要な交渉でした。特に、非関税障壁の削減に重点を置いたこと、および開発途上国の利益を考慮した交渉が行われたことは、その後の多角的貿易交渉に大きな影響を与えました。

GATT/WTOの多角的貿易交渉
第1回（1948年、ジュネーヴ）
第2回（1949年、アヌシー）
第3回（1951年、トーキー）
第4回（1956年、ジュネーヴ）
第5回 ディロン・ラウンド（1960年-1961年）
第6回 ケネディ・ラウンド（1964年-1967年）
第7回 東京ラウンド（1973年-1979年）
第8回 ウルグアイ・ラウンド（1986年-1995年）
第9回 ドーハラウンド（2001年-）

関連項目
貿易
WTO協定

もう一度検索