東京劇場

東京劇場から東劇ビルへ：築地を彩る歴史と変遷

東京の中央区築地という地で、かつて「東京劇場」という名の演劇場が存在していました。1930年3月、多くの観客を魅了する舞台として華々しく開場したこの劇場は、その後、幾多の変遷を経て、現在の東劇ビルへと姿を変えています。本稿では、東京劇場の輝かしい歴史から、東劇ビルとしての現在に至るまでの軌跡をたどります。

演劇の殿堂としての始まり

1930年の開業に際しては、当時を代表する名優、尾上菊五郎、市村羽左衛門、尾上梅幸らが出演する豪華なこけら落とし興行が行われました。築地に建つ重厚な建物は、周辺の風景の中でひときわ目を引く存在感を放ち、歌舞伎や軽演劇といった様々な舞台芸術が上演され、多くの観客を惹きつけました。

戦災と歌舞伎の拠り所

第二次世界大戦のさなか、1945年の東京大空襲で歌舞伎座が焼失するという悲劇に見舞われました。その結果、東京劇場は、歌舞伎公演を行う貴重な場所として重要な役割を担うことになります。終戦直後の1945年9月には、既に市川猿之助一座による公演が再開されており、戦後の歌舞伎界を支える中心的な存在としてその地位を確立していました。1951年の再建までは、東京における歌舞伎の中心地として、その名を広く知らしめました。

映画館への転身と新たな展開

戦前の1940年前後には、劇場の地階に「銀座ニュース劇場」、5階に「東京中央劇場」という2つの映画館が併設されました。そして、1950年末には、東京劇場は演劇から映画上映へと業態転換を図ります。地階のニュース専門館は「東劇地下映画劇場」と改称され、その後1955年には大映系統の封切館「築地大映」として生まれ変わりました。さらに、5階には「東劇バーレスクルーム」が開設され、後に有名なジプシーローズも舞台に立ちました。これらの映画館は1974年、高層ビル建設のため閉館しました。

東劇ビル時代と松竹の拠点

1975年、東京劇場跡地には高層の東劇ビルが完成しました。このビルには松竹本社が入居し、新たな拠点として機能しています。東劇ビル内の映画館は「東劇」と改称され、松竹マルチプレックスシアターズの直営館として現在も営業を続けており、2025年には築50年を迎えます。

映画館としての東劇：多様な作品との出会い

東劇は、当初は渋谷東急などとの提携で洋画を主に上映していましたが、その後は独自の路線を歩み始め、小規模なチェーンを形成したり、有楽町地域の松竹東急系の作品の上映にも貢献しました。近年では、シネマ[[歌舞伎]]やMETライブビューイングといった松竹配給作品の上映にも力を入れています。2011年には、松竹の映画興行部門が松竹マルチプレックスシアターズに継承されたことに伴い、同社の経営・運営に移行しました。しかし、MOVIX系シネコンとは異なる独自のサービスを展開し続けています。

東京劇場の遺産：築地に残る記憶

東京劇場は、単なる演劇場、映画館という枠を超え、時代の変化を映し出しながら、築地の街と共に歩んできた歴史を刻んでいます。その跡地に建つ東劇ビルは、かつての華やかさを偲ばせる、静かな証人として存在し続けているのです。数々の名優が舞台に立ち、多くの名作映画が上映されてきたこの場所は、これからも多くの人々に感動と記憶を届けてくれることでしょう。 数々の名作映画が上映され、多くの観客を魅了してきた東京劇場と東劇は、日本の映画史、演劇史に大きな足跡を残しています。

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