東京地図出版

東京地図出版株式会社

東京地図出版株式会社は、1957年5月27日に創業し、日本の出版業界において特に地図分野で活動を展開した企業でした。長年にわたり道路地図をはじめとする様々な地図製品を刊行し、多くの人々の生活や移動を支えました。代表的な出版物として「ミリオン」シリーズが広く知られています。しかし、同社はその歴史を永続させることなく、2012年2月1日をもって株式会社マイナビに吸収合併され、法人の実態としては消滅しました。

事業内容の展開

創業当初から、東京地図出版は地図製品に特化した専門出版社として確固たる地位を築きました。中でも、自動車での移動に欠かせない詳細な道路地図は同社の看板商品であり、「ミリオン」シリーズは全国のドライバーに広く愛用されました。縮尺や収録エリア別に多様なラインナップを展開し、その正確性と見やすさには定評がありました。地図作成の専門知識と技術を活かし、高い品質の地図製品を市場に提供し続けました。

転機が訪れたのは2006年です。同年10月30日に株式譲渡が行われ、毎日コミュニケーションズ（現在の株式会社マイナビ）の子会社となりました。この経営体制の変化は、同社の事業内容にも影響を与えました。それまでの地図専門という枠を超え、毎日コミュニケーションズが手掛けていた出版分野との連携が進みます。具体的には、手芸本や料理本といった、地図とは全く異なるジャンルの書籍も新たに発行するようになり、出版事業の多角化が進みました。これにより、東京地図出版はかつての地図専門出版社から、より幅広い分野を扱う総合出版社へとその性格を変化させていきました。

会社の歩み

東京地図出版の沿革は、以下の重要な節目によって特徴づけられます。

1957年5月27日: 会社が設立され、地図出版社としての歴史が始まります。
2006年10月30日: 毎日コミュニケーションズの子会社となる契約が締結され、経営体制が大きく変わりました。
2008年4月: 子会社化に伴うグループ内の連携強化の一環として、本社所在地が変更されました。それまで東京都千代田区神田神保町に置かれていた本社機能は、親会社である毎日コミュニケーションズの本社がある同区一ツ橋のパレスサイドビルディングへ移転しました。これにより、物理的な距離も縮まり、より密接な連携が可能となりました。
2012年2月1日: 東京地図出版株式会社は、親会社である株式会社マイナビに吸収合併され、その法人格が消滅しました。約55年間の活動に終止符が打たれた瞬間です。

マイナビへ引き継がれた出版物

東京地図出版がこれまで世に送り出してきた数々の出版物は、同社の消滅後、株式会社マイナビへと版権が引き継がれ、一部は現在もマイナビから刊行されています。主な出版物のカテゴリとシリーズ名は以下の通りです。

道路地図シリーズ:
グレードワン
ユニバーサル
くるマップ
ダイレクト
ワイドミリオン
リンクルミリオン
ミリオンハンディー
くるマップmini
ミリオン文庫
ちず鉄
登山・ハイキングガイド:
山歩（SANPO）ガイド
旅行・レジャー関連:
地図で旅する日本の世界遺産
その他情報媒体:
* Japan-i（ウェブ版、タブロイド版、フリーペーパーとして展開）

これらの出版物は、東京地図出版が長年培ってきた地図編集・作成のノウハウの結晶であり、マイナビによってその伝統の一部が受け継がれています。

結び

東京地図出版株式会社は、日本の高度成長期から現代に至るまで、自動車社会の発展や人々のレジャー活動を地図という形で支え続けた企業でした。特に道路地図の分野でその名は広く知られ、多くのユーザーに信頼されるブランドを築き上げました。毎日コミュニケーションズの子会社化による出版分野の拡大という変化を経験しつつも、最終的には親会社への吸収という形でその直接的な歴史は閉じられましたが、同社が生み出した地図や出版物は、形を変えて現在も一部が継承されています。地図出版の専門家集団として活躍した東京地図出版の功績は、日本の出版文化史において記憶されるべきものと言えるでしょう。

もう一度検索