東京大学アタカマ天文台

東京大学アタカマ天文台（TAO）は、南米チリ共和国北部のアタカマ砂漠、チャナントール山頂に建設された、東京大学が運営する天文台です。標高5,640mという世界最高地の天文台としてギネス世界記録にも認定されており、口径6.5mの赤外線天体望遠鏡は世界最大級の規模を誇ります。2024年5月1日に完成し、2025年からの本格的な天体観測開始を目指しています。

TAOの主な目的は、ダークエネルギーの解明や銀河、惑星系の起源を明らかにすることです。このプロジェクトは、吉井譲教授を中心に1998年に計画が開始され、東京大学天文学教育研究センターが中心となり、国立[[天文台]]などの協力を得ながら建設が進められてきました。

建設の背景

チャナントール山頂が選ばれたのは、その優れた観測環境にあります。年間を通して晴天率が高く、空気が非常に乾燥しているため、天体観測の妨げとなる水蒸気が少ないのが特徴です。1993年から1999年までの気象データに基づいて雲量を調査し、1999年から2004年にかけて8回の地形調査を実施しました。その結果、風速、気温、湿度などの気象データやシーイング（大気の揺らぎ）の計測から、可視光・赤外線観測に最適な場所であることが確認されました。晴天率は70%と、ハワイのマウナケア天文台の50%を上回り、シーイングは中間値で0.69秒角と、世界有数の観測サイトにも引けを取らないことが示されました。

2007年春からは、地元の協力を得てチャナントール山へのアクセス道路の整備が開始され、望遠鏡設置の準備が進められました。6.5m望遠鏡の建設に先立ち、パイロット的な観測を行うため、口径1mの光学式反射天体望遠鏡（miniTAO望遠鏡）が設置され、2009年から観測を開始しました。miniTAOには、近赤外線カメラと中間赤外線カメラが搭載されています。

1m望遠鏡 (miniTAO) の仕様

光学系：リッチークレチアン型反射式赤外線望遠鏡
有効口径：1000mm
副鏡口径：222.88mm
合成焦点：120000mm（F12.0）
焦点系：カセグレン焦点
観測波長：可視光、近赤外線、中間赤外線
架台：経緯台式
駆動：フリクションドライブ
制御：自動制御
観測機器：近赤外線カメラANIR、中間赤外線カメラMAX38

2014年11月には、サンペドロ・デ・アタカマ山麓研究施設が完成し、山頂施設の完成まで建設拠点として利用されました。その後は研究施設として活用されています。6.5m望遠鏡は東京大学天文学教育研究センターによって日本国内で完成し、2018年1月に報道機関に公開されました。

6.5m望遠鏡の仕様

主鏡には、オハラ製のボロシリケイト（BSCガラス）製ハニカム軽量鏡が用いられています。ハニカム構造により、十分な強度を保ちつつ軽量化が図られています。主鏡のパラメータは、ラス・カンパナス天文台のマゼラン望遠鏡の一つであるマゼラン2 クレイ望遠鏡のものを踏襲しており、製作時の検査機器を流用することで、製作費用が削減されました。主鏡の蒸着は現地で行われ、可視光・近赤外線に加え、将来的には近紫外線まで観測範囲を拡大する可能性も考慮し、銀や金ではなくアルミニウムが蒸着されています。

光学系：リッチークレチアン型反射式天体望遠鏡
有効口径：6.5m
主鏡材質：低膨張ガラス（オハラ製BSCガラス）
焦点系：3箇所（ナスミス焦点2箇所、カセグレン焦点）
合成焦点：F12.2
架台：経緯台式
制御：自動制御
観測装置：近赤外線2色同時多天体分光器SWIMS、中間赤外線分光撮像装置MIMIZUKU

関連情報

推進組織：東京大学、東京大学天文センター
技術指導：国立[[天文台]]、アリゾナ大学
関連設備：天体望遠鏡
先行研究：マグナム望遠鏡
関連観測装置：すばる望遠鏡
設置場所：アタカマ砂漠
研究分野：天文学、赤外線天文学、分光学、スペクトル、赤外線スペクトル、宇宙の大規模構造、銀河系
装置開発研究：超軽量鏡、分光計

外部リンク

東京大学
東京大学天文学教育センター
* 東京大学アタカマ天文台計画・公式ホームページ

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