東京都交通局8000形電車

東京都交通局8000形電車

東京都交通局8000形電車は、かつて東京都の路面電車で運用されていた車両です。この形式は1956年から1958年の間に、主に日本車両製造、ナニワ工機、日立製作所によって製造され、合計で131両が用意されました。

概要

東京都電車（都電）では、老朽化が進んでいた木造車の代替が急務とされていました。しかし、当時の都電に関しては将来的な廃止計画が提示されていたため、新型車両はできるだけ安価に製造されることが望まれていました。そこで、東京都交通局8000形電車は、耐用年数を約10年とし、軽量で製造が容易な設計が取り入れられました。

この電車の車体デザインは直線的で、台車にはインサイドフレーム構造を採用した本形式専用のD21台車が使われています。これにより、スカートで隠された台車は視覚的にもすっきりしています。車体が軽量だったため、一定の速度では快速な運行が可能でしたが、揺れが激しく、乗り心地には難がありました。通常はビューゲルによる集電装置が採用されましたが、一部の車両にはZ形パンタグラフが装備されているものもありました。

8000形電車は、杉並線を除く全ての都電系統で運用され、都内の様々な車庫に配置されていました。しかし、1969年からは徐々に廃車が進み、1972年には残っていた最後の24両も廃車され、形式は消滅しました。廃車後の一部の制御器は、札幌市交通局に譲渡され、同局の330形や210形、220形のワンマン化改造に使用されました。

他の鉄軌道事業者への影響

8000形電車は、形状や設計において他の鉄道事業者に多大な影響を与え、以下のような車両が登場しました。

• - 函館市交通局（函館市電）: 710形、800形

- 台車は従来のものを使用しつつ、車体が曲線を基にアレンジされています。

• - 仙台市交通局（仙台市電）: モハ400形
• - 富山地方鉄道: 7000形
• - 加越能鉄道（現・万葉線）: デ7000形

保存車両

2011年には、8053号と8125号の2両が現存していることが報告されています。8053号は、1971年頃に個人によって購入され、千葉県八千代市でスナック喫茶として使用されました。その後、カフェ「TRAIN CAFE」として営業しましたが、2016年に閉店。現在は「Metalsmith iiji」という鍛冶屋の工房の一部として利用されています。

一方、8125号は埼玉県の児童図書館で使われていましたが、2006年に撤去され、個人に売却され、2021年時点で山梨県内の企業敷地に保管されています。しかし、その状態は良好ではなく、ライトや窓ガラスが取り外されている状態です。

参考文献

• - 書籍: 『世界の鉄道 1964年版』
• - 雑誌: 『鉄道ピクトリアル』の各号にある関連記事

東京都交通局8000形電車はその短命ながらも、東京都の交通史において特筆すべき存在であり、後の車両設計にも影響を及ぼしました。

もう一度検索