東京都清掃センター水銀排ガス事件

東京都清掃センター水銀排ガス事件

東京都清掃センター水銀排ガス事件とは、2010年以降、東京都内の清掃センターで発生した、水銀が含まれる煙突からの排気による汚染問題を指します。この事件は、複数の清掃工場で水銀濃度が上昇し、清掃工場を運転停止にまで追い込んだという事実から、重大な環境問題として認識されています。さらに、水銀を含む廃棄物の不適切な処理が明るみに出たことで、上層部が辞任する事態にも発展しました。水銀濃度の上昇事例は2020年にも続いており、問題は解決されていない状態にあります。

概要

清掃工場は排気成分を常時監視し、基準値を超えた場合には運転を緊急停止する仕組みを採用しています。このため、水銀濃度が上昇し続けると、焼却炉が何度も運転停止に追い込まれる事態となります。その結果、運転停止、点検、部品交換、復旧に必要な時間やコストが大きな負担となり、清掃センターの周辺地域でもごみの処理が滞る影響が出ました。

特に、東京都内の4つの清掃工場が同時に運転停止となり、その期間は50日を超えることもありました。これにより、焼却処理が追いつかず、ゴミが何メートルにもわたって積み上がり、ハエが飛び交う異常な状況が発生しました。焼却炉の清掃や修繕には多額の費用がかかり、特注部品を利用していることもあり、修理費用が約3億円に達したとされています。最終的に、労働組合は警視庁に相談し、水銀を含む廃棄物の搬入経路を特定する調査を進めました。

原因

2022年時点では、事件の詳細な原因はまだ解明されていませんが、いくつかの関連事件が検出され、検証委員会も設立されています。

産業廃棄物の不法投棄

例えば、足立工場では無害化装置が設置されているにもかかわらず水銀濃度が異常に上昇しており、200グラムの水銀が一度に搬入されたと推測されています。この工場で受け入れられていたのは一般家庭から出る可燃ごみであり、産業廃棄物の業者による不法投棄が疑われています。

清掃工場のずさんな処理

さらに、調査を進める中で、多摩川衛生組合が水銀を含む廃棄物を分別せず焼却処分していたことが発覚しました。この焼却灰はセメント原料として出荷されていましたが、その後、組合は責任を追及され、関連の管理者が辞任しています。また、柳泉園組合では異常が検出された後も焼却を続け、その結果、さらなる水銀汚染を引き起こすことになりました。

水銀汚染検証市民委員会による調査

水銀の問題について、調査を行っている市民委員会は、組合が主張する水銀無害化能力について疑問を抱いています。報告書の大部分が情報開示請求で黒塗りされ、透明性が欠如しているとの指摘もおこなわれています。

その後

事件以降、東京都内の各自治体は水銀を含む廃棄物の分別を強化し、市民への注意喚起がなされています。清掃工場も水銀を含む廃棄物の受け入れを拒否する動きが見られます。また、国際的な水俣条約の採択に伴い、排出規制は強化されましたが、計測方法の限界から、常時自動測定器の導入が求められる声も上がっています。

この事件は、清掃業務や廃棄物処理における環境問題がどのように社会に影響を及ぼすのかを考えさせる重要な事例となっています。

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