東京都神経科学総合研究所

東京都神経科学総合研究所

東京都神経科学総合研究所（とうきょうとしんけいかがくそうごうけんきゅうじょ、英文名称: Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience）は、日本の東京都がかつて運営していた公的な研究機関です。主に神経系およびその疾患に関する多角的な調査・研究を推進することを目的としていました。高度な専門性を有する研究者が集まり、神経科学分野の発展に貢献しました。

沿革

本研究所の歴史は、1972年（昭和47年）に東京都によって設立されたことに始まります。神経科学という新たな分野の重要性が認識される中で、専門的な研究体制を構築するために開所されました。

その後、東京都における医学研究体制の見直しが進む中で、1999年（平成11年）には大きな組織改編が行われました。この時、東京都神経科学総合研究所は、東京都精神医学総合研究所、東京都臨床医学総合研究所と共に、新たに設立された財団法人東京都医学研究機構の下に位置づけられることとなりました。

そして、2011年（平成23年）4月1日には、さらなる組織再編が行われ、前述の3つの都立研究機関が統合されました。これにより、財団法人東京都医学総合研究所へと組織が改変され、東京都神経科学総合研究所としての個別の機関は発展的に解消されました。この統合により、複数の分野の研究機能が一か所に集約され、より総合的な医学研究を推進する体制が構築されました。

研究内容と対象分野

東京都神経科学総合研究所では、神経系全般およびそれに起因するさまざまな疾患を対象とした幅広い調査・研究活動が展開されました。その研究領域は極めて多岐にわたり、基礎研究から臨床応用につながる研究までを網羅していました。

具体的には、運動機能障害を引き起こすパーキンソン病、脳の異常な電気活動によるてんかん、思考力や記憶力の低下を伴うアルツハイマー病といった神経変性疾患の研究が進められました。また、脳や神経系の発達における障害、神経細胞間の情報伝達を担うシナプスの機能、記憶のメカニズム、感覚や運動を制御するシステム、言語機能の障害である失語症、そして脊髄損傷からの回復過程に関する研究も重要なテーマでした。

さらに、神経系と免疫系の相互作用、神経ウイルス感染症、さらには摂食行動の調節機構や化学的な信号物質であるフェロモンに関する研究といった生理学的な側面にも光が当てられました。これらの研究活動を通じて、神経系の機能や疾患の原因解明、そして新たな治療法やケア方法の開発を目指しました。神経疾患を持つ人々へのより良いケアのあり方に関する研究も行われていました。

組織構成

研究所内部は、専門分野ごとに複数の研究部門が設けられていました。主要な研究領域を担う部門として、高次脳機能研究分野、運動・感覚システム研究分野、神経細胞機能研究分野、そして神経発達再生研究分野が存在しました。

これらの研究分野に加え、研究活動を技術的に支援するための基盤技術部門が設置されていました。研究所の運営管理を担う事務室も重要な役割を果たしました。

各研究分野の下には、特定の研究課題に集中的に取り組む複数の研究プロジェクトチームが組織され、柔軟かつ効率的な研究推進体制が敷かれていました。

所在地

東京都神経科学総合研究所は、統合されるまで、東京都府中市武蔵台二丁目6番地にその施設を置いていました。

関連

本研究所の研究活動は、神経学、生理学、病理学といった医学・生命科学の広範な分野と深く関連していました。

現在は、東京都医学総合研究所の一部として、その研究活動の精神は引き継がれています。

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