東京都立鷺宮高等学校

東京都立鷺宮高等学校は、東京都中野区若宮三丁目に位置する公立高等学校です。地域からは「鷺高（さぎこう）」の愛称で親しまれています。

概要と歴史

本校のルーツは、1912年（明治45年）7月4日に東京市中野区（現：中野区中野三丁目）に創設された実業女学校に遡ります。その後、幾度かの名称変更や改組を経て、現在の所在地へは1938年（昭和13年）4月に移転しました。第二次世界大戦後の学制改革に伴い新制高等学校に移行する際に男女共学が導入され、現在の東京都立鷺宮高等学校として新たな歩みを始めました。

教育環境の整備においても特筆すべき歴史があります。1970年代には、当時勤務していた本多啓二教諭が学校の緑化を提唱。多くの生徒がこの活動に賛同し、「本多土建」と名乗って力を合わせ、スコップやつるはしを手に校内の緑化や施設整備に汗を流しました。その結果、キャンパスは緑豊かな空間へと変貌を遂げました。校庭の東端には、戦前から残る「ゲーテの森」として、往時の面影を残す貴重な緑地が存在しています。

また、本校の歴史は地域の交通とも深く結びついています。西武新宿線の都立家政駅は、1937年（昭和12年）の設置ですが、これは本校の前身である「東京府立高等家政女学校」の通学のために、当時の父母と学校長が西武鉄道に陳情して実現したものです。隣接する駅間が短いにもかかわらず新駅が設置された背景には、学校側の熱意がありました。1943年（昭和18年）に学校が「東京都立」となるのに合わせ、「府立家政駅」も「都立家政駅」と改称されました。このように、本校は日本で初めて通学目的で鉄道駅を誘致した学校であり、さらに校名を冠する駅を持つ学校としても全国で唯一という稀有な歴史を持っています。

定時制課程は、東京都立稔ヶ丘高等学校への統合に伴い、2007年度に募集を停止し、2010年 3月をもって閉課となりました。2014年には新しい校舎が竣工し、これを機に制服が導入され、土曜授業も開始されるなど、教育環境と制度の更新が進んでいます。近年では、国際リーディング校や海外学校間交流推進校にも指定されるなど、グローバル教育にも積極的に取り組んでいます。

教育と校風

本校は「鷺高の4C」として、挑戦（Challenge）、協調（Cooperation）、信頼（Confidence）、創造（Creation）という四つの柱を教育目標に掲げています。生徒一人ひとりが高い志を持ち、他者と協調し、社会の一員として信頼を得ながら、新しい時代を自ら創造していく人物の育成を目指しています。

学習指導においては、確かな学力の定着と大学進学の実現に重点を置いています。授業は50分×6時限で展開され、年間18回の土曜授業を実施しています。数学や英語では習熟度別の授業を取り入れ、個々のレベルに応じた指導を行っています。2年次からは文系と理系に分かれ、豊富な選択科目が用意されており、3年次には受験対策に特化した演習科目など、多様なニーズに対応できるカリキュラムが組まれています。

校章は、戦後共学化されて鷺宮高等学校となった際に、当時の美術教諭によって考案されました。緑豊かな校内の森にインスピレーションを得たクヌギの葉をモチーフにしており、平和と生徒の未来への祝福が込められています。現在の制服は、2007年度に生徒の意見を取り入れて作られた標準服を踏襲しており、紺系のブレザーにネクタイまたはリボン、スラックスまたはスカートを組み合わせたデザインです。ボタンには「自主自律」の精神を表す「自」の文字と鷺があしらわれています。校則としては、2012年度より染髪が禁止されるなど、規律を重んじる側面もあります。

部活動とエピソード

部活動も盛んで、特にサッカー部は輝かしい歴史を持っています。1973年（昭和48年）には、新人戦で当時高校サッカー界最強と謳われた帝京高校を破り、東京都第1位に輝きました。学校群制度下において、都立高校としてサッカーで東京代表となったのは本校のみという快挙でした。文化部では、書道部が高い実績を上げ、推薦入試における特別推薦枠が設けられています。軽音楽部も歴史があり、1969年には著名なミュージシャンが創設に関わり、現在では130名を超える部員が活動しています。

学校の敷地内では、かつて犬が飼われていたという心温まるエピソードも残っています。初代の「太郎」（メス）は生徒が拾ってきた犬を教員が引き取り、学校で飼うことになったもので、原則として校内を自由に過ごし、朝礼などの行事にも参加していました。

著名な卒業生

政界、文化、芸能、スポーツなど、多岐にわたる分野で多くの著名な卒業生を輩出しています（一部抜粋）。

伊東絹子（1953年卒、ミス・ユニバース・ジャパン）
三遊亭圓彌（1953年卒、落語家）
米長邦雄（1962年卒、棋士、永世棋聖）
海江田万里（1968年卒、政治家）
名木田恵子（1968年卒、児童文学作家）
岡井大二（1972年卒、ミュージシャン）
森園勝敏（1972年卒、ミュージシャン）
群ようこ（1973年卒、作家）
假屋崎省吾（1977年卒、華道家）
寺門ジモン（1981年卒、芸人）
浅岡雄也（1987年卒、歌手）
HIROMIX（1995年卒、写真家）

アクセス

西武新宿線都立家政駅より徒歩約3分
西武新宿線鷺ノ宮駅より徒歩約9分

東京都立鷺宮高等学校は、長い歴史と豊かな緑、そして地域との深いつながりを持ちながら、生徒たちが多様な可能性に挑戦し、未来を創造していくための学びの場であり続けています。

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