東京陸軍刑務所飛行士焼死事件

東京陸軍刑務所飛行士焼死事件

東京陸軍刑務所飛行士焼死事件は、1945年5月、第二次世界大戦末期の山の手大空襲の最中に発生した、アメリカ軍捕虜の死亡事件です。この事件は、別名「墜落米軍機捕虜焼死事件」とも呼ばれています。

事件の概要

1945年5月25日から26日にかけて、東京はアメリカ軍のB29爆撃機による大規模な空襲を受けました。この空襲は、それまで比較的被害の少なかった山の手地区を襲い、甚大な被害をもたらしました。東京陸軍刑務所もこの空襲で炎上し、多くの犠牲者が出ました。

アメリカ側の主張によると、刑務所に収容されていた日本人囚人約400名は救出されたのに対し、以前の空襲で撃墜され捕虜となっていたアメリカ兵62名は、留置場内に置き去りにされ焼死したとされています。また、逃げ出そうとした数名が看守によって斬殺されたとも伝えられています。

一方、日本側は、アメリカ兵が収容されていたのは刑務所の一番奥の区画であり、救出が遅れたと主張しています。また、看守は留置場の扉を開け、23名のアメリカ兵を脱出させようと試みましたが、塀に阻まれ逃げ場を失い、結果として焼死してしまったと説明しました。日本側は、この事件を不可抗力によるものと主張しました。

戦後の裁判

終戦後、連合国軍は1948年に横浜軍事法廷でBC級戦犯裁判を行い、東京陸軍刑務所長の田代敏雄陸軍大尉、看守長の越川正男陸軍少尉、そしてアメリカ兵斬殺に関与したとされる看守の大久保又一法曹長、神本啓二法軍曹、神戸初明法軍曹の5名に対し、死刑判決が下されました。

しかし、戦時中に田代から優遇を受けていた吉田茂が、GHQのマッカーサーと交渉を行い、書類審査の結果、田代の刑は懲役40年に、越川は懲役30年に、大久保、神本、神戸の刑はそれぞれ懲役10年に減刑されました。その後、田代は釈放されて僧侶となり、戦没者や刑死者の冥福を祈りながら余生を送りました。

この事件は、戦争末期の混乱の中で起きた悲劇であり、捕虜の取り扱いに関する問題点を浮き彫りにしました。また、戦後に行われたBC級戦犯裁判における、処罰と減刑の経緯も、戦争の複雑な側面を物語るものとして、記憶されるべき事件といえるでしょう。

関連事項

東京大空襲
BC級戦犯

外部リンク

本土空襲の墜落連合軍機と捕虜飛行士」「1945年5月」（福林徹）
横浜ＢＣ級戦犯裁判で裁かれた搭乗員処刑事件 8 — 東京陸軍刑務所飛行士焼死事件（POW研究会）

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