東北の神武たち

映画『東北の神武たち』の制作と魅力

『東北の神武たち』は、深沢七郎による短編小説を原作としており、1957年に映画として公開されました。この映画は、モノクロで映され、東宝スコープという新技術を使用して撮影されています。上映時間は59分で、8月27日に千代田劇場で先行上映され、10月1日に全国公開されました。

制作の背景

この映画は、東宝のプロデューサー藤本真澄が手がけたプロジェクトの一環です。彼は、映画館で二本立ての併映作を観客に提供することを考えており、その一作目として『鬼火』がヒットした後、次の作品に『東北の神武たち』を選びました。この時期、東宝は独自のシネマスコープ技術を開発しており、その素材を探す中で本作の映画化が決定されました。

映画の監督には市川崑が招かれました。彼は当時、大映と契約中でしたが、藤本との交渉によりあっさりと東宝に貸し出されました。市川は、この映画が自身にとって初のシネスコサイズでの作品となるため、大いに期待を寄せつつも新たな技術に挑戦することとなりました。

キャスト

本作品のキャストには、さまざまな魅力あふれる俳優たちが揃っています。利助ズンム役には芥川比呂志、仁作ズンム役には伊豆肇が名を連ねています。また、春永ズンム役の小高尊や文平ズンムを演じる左卜全など、個性的なキャラクターたちが映画に彩りを添えています。特に、芥川比呂志の演技は、多くの観客に印象を残しました。

制作の苦労と試行錯誤

市川監督は、シネスコ用のアナモフィック・レンズと通常のカメラレンズの違いや、東宝スコープ独自のシステムに初めて挑戦することに不安を抱えていました。撮影中には多くの苦労がありましたが、それを乗り越えた先には高品質な映像が広がることへの期待もありました。完成試写を見た藤本は、制作過程でのトラブルに対して不安を抱き、「こんな汚いシャシンができるとは思わなかった」とコメントしましたが、市川監督はその反論として、脚本やスチールを見ていたはずだと再三主張しました。それほどまでに双方の思い入れが強い作品であったことが伺えます。

同時上映作品

本作が最初に上映された8月27日には『新しい背広』が併映され、10月1日の全国公開版では黒澤明監督の『どん底』が同時上映されました。これにより、多くの客層を映画館に呼び込む狙いがありました。

結論

『東北の神武たち』は、制作過程の困難と俳優たちのパフォーマンスが見事に融合した作品です。市川崑自身の監督としての成長を促す一作であり、東宝スコープ技術の実験的な要素を感じ取ることができる映画でもあります。今もなお多くの観客に愛され続けており、映画史に残る名作として語り継がれるものとなっています。

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