東名急行バス

東名急行バスの概要

東名急行バス（とうめいきゅうこうバス）は、かつて存在した高速バス運行会社です。1967年8月に設立され、東京都渋谷区に本社を置いていました。この会社は、東名高速道路を利用する高速バスサービスを提供するために、沿線の鉄道会社やバス会社12社が共同出資して設立されました。

運行が開始されたのは1969年6月10日で、当初は50台の車両を用い、205人の従業員が在籍していました。この中には115人の運転士も含まれており、経営は東京急行電鉄が主導する形で行われました。五島昇氏が代表取締役社長に就任し、彼の経営のもとで運行がスタートしました。

経営環境と廃止

しかし、東名急行バスは開業当初から厳しい経営環境に直面しました。国鉄が運行していた東名ハイウェイバスとの路線重複や、新幹線の発展、モータリゼーションの進展により、利用者は次第に減少していきました。さらに、第一次オイルショックも影響を及ぼし、1974年度には累積赤字が8億4500万円に達しました。

このような経営難を受けて、1975年3月31日にすべての路線が廃止され、同年10月1日には会社が解散することとなりました。サービスが終了した背景には、出資会社の路線運行の傾斜もあったため、特に富士急行や静岡鉄道、遠州鉄道などが自社の運行に重点を置くようになりました。

出資事業者と資本金

東名急行バスの設立には多くの事業者が関与しており、資本金は5000万円でした。主な出資元は東京急行電鉄（13.6%）、小田急電鉄および名古屋鉄道（各13.5%）、その他の鉄道会社やバス会社が少数の持ち株を持っていました。

この事業が行われたのは高度経済成長期とも重なり、多くの交通機関が開発を進めていた時代でした。クオリティの高いバスサービスが求められていたものの、競合との厳しい戦いが結果として命運を共にすることとなったのです。

乗務員と制服

東名急行バスでは、運行開始前から乗務員の募集を行っていました。サービスの運行は基本的にワンマン運行で、特に渋谷から名古屋への直通便では東名静岡で交代が行われていました。乗務員の制服は、黄土色の制帽とズボン、黒い光沢のあるジャケットというスタイルで、これはグレイハウンド社の制服からインスパイアを受けていました。

会社解散後、乗務員たちはさまざまな他社に転職し、一部は国鉄バスに転籍して高速バスの運転士として活躍していました。また、OB組織「東名急行バス友の会」を通じて交流を続けています。

営業所とターミナル

本社は渋谷区桜丘町にあり、現在のセルリアンタワーの位置にありました。営業所は東京、静岡、名古屋に設置され、ターミナルは主に渋谷駅、新静岡駅、名鉄バスセンターにありました。

特に渋谷駅では、当初は東京急行電鉄本社前に位置していましたが、後に渋谷駅西口の高速バス乗り場に改築されるなど、交通の便が良い場所に拠点を構えることができました。

主要な運行路線

東名急行バスは、渋谷から名古屋や静岡などへの路線を展開し、高速バス業界での存在感を有していました。主な路線には、渋谷駅から名古屋・新静岡駅、東名静岡、浜松、沼津、御殿場などへの便があり、それぞれに快速、急行、特急といった種別が存在しました。

また、車両は全て三菱製で、軽量化された高速バス専用の設計が特徴でした。乗客には快適な輸送を提供する努力がなされていましたが、残念ながら時代の流れには逆らえず、短命に終わった運行会社となりました。本社や営業所の場所は多くの人に印象として残り、交通史に残る一ページとして語り継がれています。

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