東座 (塩尻市)

塩尻東座

塩尻東座は、長野県塩尻市大門に位置する映画館です。地元では「塩尻東座」という名称でも親しまれています。121席の1号館と58席の2号館、計2つのスクリーンを有し、塩尻市内では唯一の映画館として、地域の人々に映画を提供し続けています。運営は株式会社塩尻劇場が行っており、代表取締役は合木こずえ氏です。

歴史

戦前

東座の歴史は1922年（大正11年）にまで遡ります。小林金一郎氏ら14名によって、芝居小屋として建設が計画されました。当時の資本金は1万2000円、1株20円で株式が募集され、同年9月17日に東座は開業を迎えました。開場時には市川ぼたん一座が招かれ、3日間で2000人以上もの観客を集めるほどの大盛況でした。開業当初の東座は、近くの遊郭とともに多くの人々で賑わっていました。その後、昭和に入ると映画の上映も開始され、芝居と映画の両方を上映する劇場へと変化を遂げました。1937年（昭和12年）時点で、塩尻町には東座と塩尻電気館という2つの娯楽施設がありましたが、これらは山田興業部によって経営されていました。

戦後

戦後の1948年（昭和23年）には、東座は常設の映画館となりましたが、経営者は何度も変わりました。1954年（昭和29年）には、松本市の映画館に勤務していた合木茂夫氏が支配人として着任しました。合木氏は、道路をまたぐ横断幕を設置したり、映画のPRのために主演俳優の格好で街を練り歩くなど、当時としては画期的な宣伝活動を行いました。また、10回分の入場ポイントが貯まると1回無料になるというポイントサービスも導入し、人気を集めました。当時の東座では東宝と松竹の作品が主に上映されていました。1950年代後半には、塩尻町には東座を含めて3つの映画館が存在していました。

1960年（昭和35年）には、合木茂夫氏が建物を買い取り、独立経営を開始しました。当時の東座は2階が畳敷きで、観客は座布団を持ち込んで鑑賞していました。雷による停電で上映が中断した際、怒った観客がスクリーンにトウモロコシを投げつけ、スクリーンが破損したというエピソードも残っています。近くの神社で達磨市が開催される夜には、始発電車を待つ観客で賑わい、オールナイト上映が開始されるきっかけとなりました。

建て替え

建物が面する道路の拡張工事に伴い、閉館も検討されましたが、1965年（昭和40年）に裏手の土地を確保し、現在の建物へと建て替えられました。1号館では、公開から少し時間が経った作品を2本立てで上映していました。1979年（昭和54年）頃には、雀荘として使用されていた建物の2階を改装し、成人[[映画]]専門の2号館をオープンしました。1981年（昭和56年）版の『映画館名簿』には、「塩尻東座2号館」として掲載されています。その後、1号館は開店休業状態となり、成人[[映画]]館である2号館の集客に頼る日々が続きました。

自主上映会の開催

合木茂夫氏の娘である合木こずえ氏は、石原裕次郎や小林旭などのスターに憧れ、俳優を目指して上京しました。東京のテレビ制作会社に勤務後、1994年（平成6年）に故郷の塩尻東座に戻り、経営を手伝うようになりました。松本市で自主上映会を主催していた宮崎善文氏らの協力を得て、1995年（平成7年）秋には、塩尻市出身の古厩智之監督の長編デビュー作『この窓は君のもの』を自主上映し、大きな成功を収めました。これをきっかけに自主上映会「フロム・イースト（FROM EAST）」が発足し、ファンクラブの会員も少しずつ増えていきました。合木こずえ氏は、都内でテレビ番組の構成作家やコラムニストとして活動しながら、フロムイーストのために毎月帰郷するという生活を続けていました。同年には、原將人氏が演出したドキュメンタリー「細腕映画館主奮戦記」が放送され、塩尻東座とフロム・イーストの宣伝にもなりました。このドキュメンタリーを見た小説家のねじめ正一氏が実際に塩尻東座を訪れたことも話題となりました。1996年（平成8年）3月下旬には、『ゴジラvsデストロイア』の公開に合わせてイベント「朝まで生ゴジラ」を開催し、特撮映画監督や視覚効果の専門家などを招きました。

近年の動向

2003年（平成15年）11月30日には、塩尻映画劇場が閉館したため、塩尻市内の映画館は塩尻東座のみとなりました。2010年（平成22年）には、合木茂夫氏が病に倒れたため、合木こずえ氏が東座の社長に就任しました。2011年（平成23年）には合木茂夫氏が亡くなりました。2022年（令和4年）9月には、創業100周年を迎えました。

データ

所在地：長野県塩尻市大門四番町4番8号
アクセス：JR中央本線・篠ノ井線塩尻駅から徒歩16分
座席数：1号館（121席）、2号館（58席）

脚注

外部リンク

公式ウェブサイト
* 東座 港町キネマ通り

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