原將人

映画監督 原將人：実験と挑戦の軌跡

原將人（はら まさと）氏は、1950年東京都目黒区生まれの映画監督です。現在、京都府京都市在住。映像短歌の会主宰を務め、日本[[映画監督協会]]、フィルム文化を存続する会、映画人九条の会の会員でもあります。

彼のキャリアは早くも高校時代に花開きました。1968年、在学中に制作した短編映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』が、第1回フィルムアートフェスティバル東京においてグランプリとATG賞をW受賞。植草甚一、武満徹、勅使河原宏ら錚々たる審査員を驚かせ、「天才映画少年」として一躍脚光を浴びました。この成功を足掛かりに、映画監督としての道を歩み始めることになります。

その後も、大島渚監督作品『東京戦争戦後秘話』の脚本に携わるなど、着実に経験を積んでいきます。1973年には、23歳の若さで『初国知所之天皇』を発表。これは、独自の映画理論と哲学を凝縮した、彼の代表作のひとつとなるでしょう。当初は、アメリカンニューシネマの代表作『イージー・ライダー』に影響を受けたロードムービーを目指しましたが、資金難のため頓挫。しかし、原氏は諦めず、8ミリカメラ片手にヒッチハイクの旅をしながら撮影を続け、編集、音楽、ナレーションに至るまで、ほぼすべての工程を一人でこなして作品を完成させました。この作品は、後に瀬々敬久、大森一樹、犬童一心といった多くの映画作家や監督に多大な影響を与え、「伝説の映画」として語り継がれることになります。現在も5年に一度ほどのペースで、主に京都でライブ上映が続けられています。

その後も、芭蕉の『奥の細道』をモチーフにした私映画『百代の過客』（1995年）、商業映画『20世紀ノスタルジア』（1997年、日本[[映画監督協会]]新人賞受賞）、ライブ上映作品『MI・TA・RI!』（2002年、フランクフルト国際映画祭観客賞受賞）など、精力的に作品を発表。多様な表現方法と実験的な試みを重ねてきました。2014年には双子を迎え、その経験を基にした『双子暦記』三部作の制作も開始しています。

しかし、2018年には、自宅全焼という大きな困難に見舞われました。大正時代の建築であった自宅は漏電により全焼し、『初国知所之天皇』と『MI・TA・RI!』のオリジナルフィルムも焼失。原氏自身も火傷を負うという大きな損失を経験しました。この経験は、『焼け跡ダイアリー』『焼け跡クロニクル』というドキュメンタリー映画として作品化され、彼の創作活動の軌跡を改めて知ることのできる作品となっています。また、彼の8年間の活動を追ったドキュメンタリー映画『映画になった男』も公開されました。

困難を乗り越え、原氏は活動を継続しています。2019年には特集上映「原將人って誰だ!」が開催され、2020年にはクラウドファンディングによって『初国知所之天皇』のネガフィルムからのリプリントが実現。2024年には『原將人映画ライブツアーTOKYO／YOKOHAMA』を開催するなど、精力的な活動を続けています。

原將人氏の作品は、実験的な試みと独自の映画哲学、そして並々ならぬ情熱によって支えられています。これからも、彼の挑戦は、日本の映画界に新たな息吹を与え続けるでしょう。

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