東方三博士の礼拝 (ボッティチェッリ、フィレンツェ)

サンドロ・ボッティチェッリの『東方三博士の礼拝』は、1475年または1476年頃に描かれた初期の傑作です。この作品は、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されており、ボッティチェッリが手がけた複数の『東方三博士の礼拝』の中でも特に重要な一点とされています。

この絵画は、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会のガスパーレ・ディ・ザノービ・デル・ラーマの葬儀礼拝堂のために依頼されました。特筆すべきは、この作品にメディチ家の人々が数多く描かれている点です。聖母マリアの前に跪く王として描かれているのは、コジモ・デ・メディチです。彼は、ジョルジョ・ヴァザーリによって「その生命力と活力で、現存するすべての中で最も優れた人物」と称された人物です。また、赤いマントを身につけ中央で跪く二番目の王は、コジモの息子であるピエロ、そして三人目の王は、ジョヴァンニとされています。さらに、コジモの孫であるジュリアーノとロレンツォも描かれています。東方三博士として描かれたメディチ家の人物は、絵画が描かれた時点では既に亡くなっていましたが、フィレンツェは実質的にロレンツォによって支配されていました。

ボッティチェッリとメディチ家の兄弟との密接な関係が、裕福なガスパーレが親族の肖像画を祭壇画に含めることを可能にしたのか、あるいはガスパーレがこれらの影響力のある人物に賛辞を捧げる機会を喜んだのかは定かではありません。しかし、ボッティチェッリがこれらの人物の描写に多大な努力を費やしたことから、これが依頼の重要な要素であったことは明らかです。また、ガスパーレ自身も絵画の中に登場しているとされています。画面右側の、白い髪と水色の衣服を身につけ、鑑賞者を見て指さしている老人がそれであると考えられています。さらに、ボッティチェッリ自身も、右端に黄色いマントを身につけた金髪の男性として自画像を描いたと言われています。

ジョルジョ・ヴァザーリは『ルネサンス画人伝』で、この作品について「この場面の頭部には言葉では言い表せないほどの態度があり、正面向き、横顔、4分の3正面向き、俯き顔など、さまざまな方法で、老若男女を問わず、従者の表情が異なっている。非常に多様で、画家が職業を完璧に習得していることを示している」と述べています。さらに、ボッティチェッリが各王の従者たちの違いを明確に示していること、色、デザイン、構成が素晴らしい作品であること、そして衣服の細部への注意などから、当時のフランドル派の影響を習得していることも指摘しています。

この作品は、ボッティチェッリの初期の作品でありながら、その画力、人物描写、構成力、そして当時の美術動向への理解を示す重要な作品です。また、メディチ家の権勢を象徴する作品としても、美術史における重要な位置を占めています。

関連作品として、フィリッピーノ・リッピの『東方三博士の礼拝』やレオナルド・ダ・ヴィンチの『東方三博士の礼拝』も参照してください。

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