東方三博士の礼拝 (レンブラント)

レンブラントの隠された傑作『東方三博士の礼拝』：ローマでの発見と新たな光

17世紀オランダ黄金時代の巨匠、レンブラント・ファン・レインの描いた絵画『東方三博士の礼拝』が、近年ローマで発見されたことは美術史における大きな出来事です。この作品は、1632年から1633年頃に制作されたと推定され、縦54センチ、横44センチの、キャンバスに貼付した紙上の油彩画です。

主題は新約聖書の「マタイによる福音書」に記される、イエス・キリストの誕生を祝って東方三博士が贈り物を持って訪れる場面を描いています。この絵画は、レンブラントが構想していたと言われる「イエス・キリストの生涯と受難」連作の一部として制作された可能性も示唆されており、その宗教的な重要性も高く評価されています。

この絵画が発見された経緯は、まさにドラマチックです。2016年、ローマの自宅で、所有者の家の壁から作品が落下したことがきっかけでした。額縁の破損により修復を依頼した際、修復者であるアントネッラ・ディ・フランチェスコ氏が洗浄中に、作品がこれまで考えられていたレンブラントの複製ではなく、真作であることを突き止めました。

この発見は、美術界に衝撃を与えました。というのも、レンブラント自身によるこの『東方三博士の礼拝』の真作は、長年失われたものと考えられていたからです。これまで、エルミタージュ美術館とイェーテボリ美術館に所蔵されている複製だけが知られており、レンブラント研究においても重要な謎の一つでした。オランダ美術史研究所では、これらの複製について、レンブラント自身による作品、あるいはレンブラント工房の作品、もしくはレンブラントの作品を模倣した作品という可能性を含めて検討されてきました。

ローマのフランス・アカデミーは、2021年6月22日にこの作品の真作性を確認し、イタリア遺産基金の後援のもと、ヴィラ・メディチで「レンブラント：原型を認識し、不可視を見る」と題したシンポジウムを開催。その中で、この貴重な絵画を一般公開しました。このシンポジウムは、レンブラント研究プロジェクトにも貢献する重要な機会となりました。

現在、この絵画はローマの個人所有者の手にありますが、美術館への貸し出しが予定されているとのことです。今後、より多くの研究者や美術愛好家がこの隠された傑作を鑑賞できる機会がもたらされることを期待しています。この発見は、レンブラントの作品理解を深めるだけでなく、17世紀オランダ絵画史の新たな一ページを開く重要な出来事と言えるでしょう。 レンブラント研究者たちが長年探し求めていた作品が、思いもよらない形で発見されたという事実は、美術史研究の面白さと奥深さを改めて示していると言えるでしょう。この絵画の発見が、今後、レンブラントの作品やその時代の美術に関する更なる研究を促進し、新たな発見につながることが期待されます。

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