東方見聞録 (映画)

東方見聞録

「東方見聞録」は、1992年5月に公開予定のあった日本映画で、戦国時代を背景にしたコメディタッチの物語が描かれています。しかし、撮影中に発生した悲劇的な事故により、劇場公開が中止となりました。その後、オリジナルビデオとしてリリースされ、生涯にわたって語り継がれる作品となったのです。

概要

この映画は、傍若無人な殿様に嫌気がさしていた双子の兄弟や足軽、武将、姫君、さらに漂着したポルトガルの騎士など、七人の登場人物が黄金の宝を求めて繰り広げる大冒険を描写しています。戦国時代の設定ではあるものの、現代的な台詞やキャラクターの描写が目立ち、観客にとってはコメディとしての楽しさを提供しました。また、戦闘中にふざけて倒れたり、落城を前に自害を拒む姫君の姿は、「コミカルで等身大の時代劇」として高く評価されています。

女優設楽りさ子にとって本作が映画デビュー作である点も注目です。

製作の背景

「東方見聞録」は、当初8億円の製作費を見込んでいましたが、実際には会社の負債返済に使われたため、製作予算は半分の4億円に減少しました。特に印象的なのは、滝壺のシーンに必要なオープンセットです。このセットは3ヶ月の制作期間と3億円をかけて造られたもので、実際の滝壺のように水流を調整できる工夫が施されていました。しかし、残された予算はわずか1億円で、撮影は常に経済的な圧力にさらされていました。

100人以上の出演者が、プレハブ小屋での生活を余儀なくされる厳しい環境でした。

撮影中の事故

1991年9月22日、困難な撮影条件の中で悲劇的な事故が発生しました。滝壺のシーンを撮影中、エキストラの足軽役が鎧を着た状態で入水し、深みにハマって溺れる事態に陥りました。この事故では、救助が遅れたため、エキストラは意識不明の重体となり、翌日亡くなってしまいました。この事故を受けて、監督と助監督は安全管理の不備を指摘され、書類送検されました。

事故により撮影を続ける意欲を失った監督でしたが、周囲の説得もあって、残りの撮影は東宝スタジオの屋内セットで行われました。

公開中止の決定

完成した作品は1992年5月18日に公開予定でしたが、撮影中の事故の影響が色濃く残っていたため、劇場公開は中止となりました。この結果、制作費の回収は絶望的となり、製作会社は多額の負債を抱え倒産しました。その後、エキストラの遺族が業務上過失致死で訴訟を起こし、監督は敗訴。3,000万円以上の保証金を負うことになりました。

そのため、監督はテレビやラジオ、雑誌でのコメンテーターとして多忙な生活を送ることになり、保証金の返済に取り組む日々が続きました。

ソフト化の経緯

映画は完成したものの、当初はフィルムが債権者に差し押さえられる事態が発生。しかし、1993年にビデオソフトとして発売され、続いて2001年にDVDもリリースされました。多くの映像ファンにとって、この作品は悲劇的な背景を持ちながらも、楽しめる一作として記憶されています。

キャストとスタッフ

主要キャストには緒形直人や設楽りさ子などが出演し、監督は井筒和幸氏が手掛けました。脚本や音楽も多くの才能が結集しており、作品自体が多面的な魅力を持つことを示しています。脚本は神波史男、高橋洋といった人々が担当し、映像作品としても高い完成度でした。

「東方見聞録」は、ただの事故の記録ではなく、戦国時代のエッセンスが詰まった冒険物語として、今後も多くの方に魅力をもって受け入れられることでしょう。

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