東洋化工爆発事故

東洋化工爆発事故について

1959年（昭和34年）11月20日午前10時30分頃、横浜市金沢区に位置する東洋化工横浜工場で、痛ましい爆発事故が発生しました。この事故は、TNT火薬の脱色精製試験中に、作業上の不手際から発火したことが原因です。

事故の経緯

事故当日、第2溶填室にてTNT火薬の脱色精製試験が行われていました。試験中、装置の操作ミスにより発火が発生。これにより、まず約40kgの精製済み爆薬に引火、さらに溶融釜内の約450kgのTNT火薬にも引火し、小規模な爆発が起こりました。この最初の爆発から約5分後、燃えながら飛び散った木片が、溶填室外に保管されていた約1.5トンの未精製TNT火薬に引火し、大規模な爆発を引き起こしました。

この大爆発は、半径約2kmにわたって破片と爆風を撒き散らし、周辺の住宅など5,116戸に甚大な被害を与えました。幸いにも、南側に位置する火薬庫には約200トンもの火薬類が貯蔵されていましたが、横浜市消防局の懸命な消火活動により延焼を免れ、更なる大惨事は回避されました。当時、消火活動にあたった消防課長は、「もし火薬庫が延焼していたら、金沢区全体が吹き飛んでいただろう」と語っています。

犠牲者

この爆発事故で、工場係長を含む3名が命を落としました。工場係長は、出火時に一時退避したものの、第2溶填室に戻ろうとして爆発に巻き込まれました。また、2名の女性従業員も爆発により犠牲となりました。工場内外では、重傷者24名、軽傷者362名という多数の負傷者が出ました。負傷者の中には、横浜市立六浦小学校の児童96名、横浜市立大学の学生53名、市立金沢高校の生徒23名、六浦中学校の生徒15名、金沢中学校の生徒13名、八景小学校の児童4名など、多くの児童・生徒が含まれていました。さらに、付近を走行していた京急本線の上り急行電車の乗客も、40名以上が負傷しました。

東洋化工について

東洋化工は、泰道繊維系の企業で、本社は東京都中央区にありました。事故現場となった横浜工場は、1952年5月に旧第一海軍技術廠火工部跡を借りて設立されました。同年9月には火薬類製造営業の許可を受け、小松製作所や住友金属工業などの下請け会社として、在日米軍向けの特殊砲弾を製造していました。朝鮮特需終結後は、米軍から払い下げられた廃砲弾を解体し、TNTとヘキソーゲンを充填した土木・鉱山用の火薬を製造していました。同社は、横浜工場のほかに三浦市にも工場を所有していました。

現在、東洋化工は三協立山株式会社タテヤマアドバンス社として事業を継続しています。ただし、北海道小樽市と富山県滑川市に存在する同名の企業とは一切関係がありません。

関連作品

この事故を題材にしたフィクション作品として、斎藤栄の推理小説『爆破都市』（青樹社、1971年）があります。この作品は、横浜市金沢区釜利谷の「東京火薬」の工場爆発を題材としています。

参考文献

読売新聞縮刷版 1959年11月
毎日新聞縮刷版 1959年11月

関連項目

* 日本カーリット工場爆発事故 - 1955年に横浜市保土ケ谷区の火薬工場で発生した爆発事故

この事故は、火薬を扱う工場における安全管理の重要性を改めて浮き彫りにする出来事となりました。二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、教訓として後世に語り継がれるべきです。

もう一度検索