東洋社会党

東洋社会党の概要

東洋社会党（とうようしゃかいとう）は、1882年5月25日に樽井藤吉や赤松泰助らによって長崎県島原で設立された政党で、日本初の「社会党」という名称を冠するものでした。本政党の機関紙は『半鐘警報』です。樽井は国学に影響を受けたアジア主義者であり、公平と道徳の確立を重視し、社会全体の最大の幸福を目指しました。そのため、財産の均等化などを掲げ、地方農民を支持基盤とする動きを見せました。

党が設立された当初、樽井自身が数人の同志と共に活動し、松浦郡に本拠を移すことで支持者を3,000人に増やしましたが、その活動は明治政府の警戒を引き起こし、翌月には共産主義革命を企てたとの容疑で解散命令を受けました。樽井はこれに従わず、1883年1月に集会条例違反で禁錮刑となり、結果的に東洋社会党は強制的に解散することとなりました。

結成までの経緯

樽井は1874年に社会主義的な政策を岩倉具視に提案しますが、受け入れられませんでした。その後、西南戦争に参加し敗北を喫したことから、無人島に理想の村を作る試みを行いますが、これも失敗に終わります。長崎に移ると、外国帰りの者から彼の主張が西洋の社会主義に近いと知り、それを契機に「東洋社会党」の結成を目指すようになりました。

1882年3月、樽井は『錦江新誌』という号外を発行し、演説を基にした文章を掲げました。この中で、圧制政治が虚無党の出現を生んでいると述べ、政府と対抗するためには新たな思想が必要であると主張しました。1882年4月18日には同志との準備会を経て、正式に「東洋社会党」を発足させます。党則では道徳を行動基準とし、平等や公共の福祉を重視する姿勢が示されました。

党の活動と支持基盤

樽井のほかにも、家永芳彦や横田寅彦などが党の中心的存在でした。財政面では、奈良の木材商である土倉庄三郎が支援しました。特に、佐賀県西松浦郡の農民が鍋島閑叟の改革を求める運動に参加し、その支持を獲得することで東洋社会党の影響力が強まりました。党は3000人超の支持を集め、その大多数は農民でした。

このような活動が広まる中、多くの農民たちが樽井の思想を受け入れ、党は勢いを増しました。さらに、機関誌『半鐘警報』も発行されるなど、党の活動が活発化しました。

弾圧と消滅

しかし、社会党の出現は論壇で賛否を呼び起こし、特に政府当局は東洋社会党を共産党や虚無党と同一視して警戒しました。1882年7月、内務卿の山田顕義は結社禁止を命じるに至ります。樽井はこの命令に反抗しつつも党則の修正を進めていましたが、さらに1883年1月には改正党則を印刷・配布したことにより、集会条例違反で禁固刑にされました。

この結果、東洋社会党は事実上消滅することとなります。

その後の影響

樽井の親類である楠本助一郎は党の党則案を受け取っており、これを契機に奈良で別の団体が結成されました。また、明治20年代には『日本社会燈』という結社が存在し、東洋社会党からの流れを組んでいたと言われています。樽井がその後、代議士に選出された際、彼の過去が警戒されましたが、在職中には特に目立った活動はありませんでした。

思想と評価

東洋社会党の思想は、最大多数の最大幸福を目指したユートピア主義であり、自由民権運動の中で他の政党と異なる立場を取りました。土地共有を主張しつつ、私有財産の禁止については触れていない点が特徴です。樽井の思想は無政府主義的とも評価されており、彼の思想は当時の社会主義運動への影響を強く残しました。社の実現に向けた試みは、理想主義的で空想的であったとの指摘も存在しますが、その思想は確かに多くの議論を呼ぶものでした。

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